東京大学(東大)、京都工芸繊維大学(京工繊)、電気通信大学(電通大)の3者は5月13日、集団の中にいる歩行者は、単に周辺密度の高さだけではなく、普段通りの速さで歩けなくなることによって、より混雑を感じることを明らかにしたと発表した。
同成果は、東大 先端科学技術研究センターのカ・ギョウロ特任助教、同・フェリシャーニ・クラウディオ特任准教授、同・柳澤大地准教授、同・西成活裕教授、京工繊の村上久助教、電通大の長濱章仁助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、交通と交通の行動的および心理的側面に焦点を当てた学術誌「Transportation Research Part F」に掲載された。
緊急避難などで集団の密度が極めて高くなった歩行者空間において事故を未然に防いだり、人が感じる心理的な混雑感を推測できる物理的指標を調べたりする学問として「群集マネジメント」があるが、その科学的根拠を示すために不可欠と考えられているのが歩行者研究だという。
先行研究では、密度によって分類される歩行者サービスレベル(LOS)が広く使われており、歩行者集団の物理的な密集度と主観的な混雑感の両方の指標になると考えられてきた。
しかし、密度でのLOS分類を使用するためには、密度と歩行速度の間に負の線形相関(密度大なら低速度、密度小なら高速度の関係)を示す基本図が成立するという前提条件が必要とされるものの、この条件が常に成立するかどうかは不確かであり、密度や速度の物理指標が、歩行者の主観的混雑感と一致するという実験的検証はこれまでなかったという。
そこで研究チームは今回、歩行者集団の行動実験によって、速度と密度による物理指標と混雑感に関する心理指標の関係を検証することにしたとする。