東邦大学は5月10日、魚油に豊富に含有される「ドコサヘキサエン酸(DHA)」および「エイコサペンタエン酸(EPA)」が、胃の過剰収縮の原因となる「プロスタノイド」による胃底平滑筋の収縮反応を強力かつ即時的に抑制することを見出したと発表した。

同成果は、東邦大大学院 薬学研究科 医療薬学専攻の徐可悦大学院生、同大 薬学部薬理学教室の吉岡健人助教、同・小原圭将講師、同・田中芳夫教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国薬理学会と英国薬理学会とWiley社が共同発行している薬理学を扱うオープンアクセスジャーナル「Pharmacology Research & Perspectives」に掲載された。

DHAおよびEPAは、魚油に豊富に含まれるn-3多価不飽和脂肪酸であり、心血管疾患や脂質異常症などの多くの疾患に対して有益な効果をもたらすことが報告されている。ただし、これらの疾患に対するDHAおよびEPAの有益な効果のメカニズムは完全には解明されていないという。

DHAおよびEPAの長期摂取による効果として示唆されているのが、プロスタノイド産生の抑制が重要な役割を果たすという点だという。プロスタノイドは、プロスタグランジン(PG)類とトロンボキサン(TX)類からなる生理活性脂質の総称で、消化管に関してはその生理機能の調節などに関わっていることが知られている。中でも胃においては、その運動機能が多くのプロスタノイドにより影響を受けることが報告されており、同脂質の過剰産生は胃の運動機能異常を引き起こすことが示唆されている。

DHAおよびEPAを含む魚油を長期間摂取すると、胃でのプロスタノイド産生が減少することが報告されており、両脂肪酸の長期摂取は、過剰産生されたプロスタノイドによって誘発される胃の運動機能異常を改善することが期待されている。しかし、プロスタノイドにより誘発される胃底平滑筋の収縮反応に対するDHAおよびEPAの即時的効果については、これまでのところ検討されていなかったという。