SDGs×森林

ここからは、SDGsと森林の関係について述べる。ここですべて紹介できるわけではないため、興味がある方はより詳しく調べてみるとよいだろう。

2017年1月の国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forest:UNFF)特別会合において、「国連森林戦略計画(United Nations Strategic Plan for Forests (UNSPF) 2017ー2030)」および「4ヶ年作業計画2017-2020(Quadrennial Programme of Work:4POW)」が採択された。

UNSPFは、SDGs、パリ協定、生物多様性条約、砂漠化対処条約、国連森林措置といった国際的な文書、プロセスや目標実施に向けた枠組みを示すものとして重要な意味を持っている。

  • UNSPFに関連する6つの世界森林目標と関連するSDGsの目標

    UNSPFに関連する6つの世界森林目標と関連するSDGsの目標(出典:木材保存 Vol.47-1)

また、2030年までに国際社会が達成すべき目標として、6つの世界森林目標と関連する26のターゲットが掲げられている。この6つの目標に関連するSDGsにおける目標が上の表だ。 UNSPFが掲げるミッションがSDGsの多くの目標の達成に関連付けられていること、特に目標15「陸の豊かさもまもろう(持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、土壌の劣化阻止・回復および生物多様性損失の阻止)」の達成と強くリンクしていることが理解できる。

では、国内の具体的な動きを見ていこう。

国内でも、林業のスマート化が進み始めている。林業の事故率は全産業の平均12倍以上高く、危険な産業である。また、林業は補助金で成り立っている産業ということもあり、担い手不足や作業効率化の課題が深刻化している。

そこで、長野県では産学官が連携してスマート林業による「森林の見える化」を進め、作業の効率化に取り組んでいる。これは、SDGsが掲げる技術革新や働きがいの実現、そして協働による問題解決につながる。

  • ICTを活用したスマート林業

    ICTを活用したスマート林業(出典:林野庁)

中大規模建築物の木造化・木質化も進んでいる。これまでは耐火性などの問題から中大規模建築物に木材を使うことはまれであったが、現在は耐火部材やCLTなどの技術開発が進んだことによって積極的に利用する動きがみられる。

  • 中高層建築の木造化・木質化

    中高層建築の木造化・木質化(出典:林野庁)

そもそも、なぜ木材なのか。これは、木材は製造時のCO2排出量が少ないうえ、木材自体に炭素を固定しているため地球温暖化防止に一役買っている。このような技術の進歩や新たな木材利用、気候変動対策などはSDGsの目標につながっている。

以前記事にしたセルロースナノファイバー(CNF)などの新たなバイオマス素材を使った製品開発も進んでいる。

  • 新たなバイオマス素材の開発

    新たなバイオマス素材の開発(出典:林野庁)

CNFに関する詳細は以前の記事を参考にしていただければと思うが、上の写真のCNFや改質リグニンは木材を原料としている。化石燃料由来のプラスチックや金属の代替として利用できるため生産や廃棄時の環境負荷を抑制できる。また、SDGsが掲げる「技術開発」や「つくる責任、つかう責任」の目標にもつながる。

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紹介した事例はごく一部であるが、森林とSDGsは非常に密接に関係していることがお分かりいただけただろうか。控えめに見積もってもSDGsの7、9、11、12、14、15、17の7項目には当てはまる。

そもそも持続可能で再生産可能な資源は、生物資源以外ありえない。そういった原理原則を考えると、持続型社会の実現にとって森林は非常に重要な資源の宝庫であることが分かるだろう。