東芝と東芝デジタルソリューションズは、東芝アメリカと、量子インターネットの基盤技術開発を行うアメリカの研究開発推進機関「Chicago Quantum Exchange(CQE)」が、東芝の多重量子鍵配送(QKD)システムを使用したQKDネットワークリンクを構築し、実証を開始することを発表した。

CQEは、CQEコミュニティ間、アメリカ中西部全域、および世界中で量子情報科学・工学を推進するためのハブ機能をもつ研究開発推進機関で、拠点であるシカゴ大学をはじめ、米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所、フェルミ国立加速器研究所、イリノイ大学アーバナシャンペーン校、ウィスコンシン大学マディソン校、ノースウェスタン大学などが加盟しており、会員機関と企業パートナーは研究活動で協力している。

2021年6月よりCQEにパートナーとして参画する東芝アメリカは以前より、QKDネットワークリンクの構築に向け協議・準備を進めてきており、今回の実証により同社とCQE参加機関とのコラボレーションを強化することで、将来の量子インフラ構築や量子人材確保につながることが期待されるとしている。

QKDは、研究フェーズから実用化フェーズに移行した最初の量子技術の1つで、ある時点で暗号化された機密情報の保存のみを行い量子コンピュータが利用可能になった際に復号化し解読する「刈取り攻撃」の防御に向けた早期対応を可能にする。

量子コンピュータは現代のセキュリティ方式を破る力を有するとも言われ、量子コンピュータによる解読に耐えうる耐量子暗号通信の仕組み開発は、今後想定されるセキュリティ問題の解決につながる。

そのため、今後市場が大きく拡大するとされる量子産業の将来に備え、ハードウェア機能・ソフトウェア互換性、セキュリティなどを確認する長期的な実証環境が必要だ。

今回実証を行うQKDネットワークリンクを用い、CQEの研究者は、ネットワークに注入されたノイズがネットワーク上の通信やセキュリティに及ぼす影響の把握や、デバイスの量子メモリへの接続といったさまざまな実証を行う予定だとしている。

今回の実証で利用されるQKDネットワークリンクは、米国全体で構築が進められている量子ネットワークの一部区間を使用して構築されているという。今後もネットワークを拡大させ、シカゴ大学と米国エネルギー省アルゴンヌ国立研究所間を接続し、CQE参加機関、シカゴ大学の学生およびCQE研究者が実証や研究にも活用する予定だとしている。