国立長寿医療研究センター(NCGG)は、老齢マウスモデルを用いた動物実験により、臼歯(奥歯)を喪失することが脳の老化を促進することを発見したと発表した。
同成果は、NCGGの山田匡恵外来研究員、同・口腔疾患研究部の松下健二部長らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
厚生省(当時)と日本歯科医師会が1989年から推進している、80歳まで20本以上の自分の歯を残そうという「8020運動」などでも知られるように、年を重ねても健康でいるためには歯を失わないようにすることが重要とされている。それは認知機能にも当てはまり、これまでの研究から、高齢者における残存歯数の減少と認知機能の低下に関連があることが報告されている。ただし、その詳細については不明だったという。
そこで研究チームは今回、18月齢の老齢マウス上顎の両側第一臼歯を抜歯し、その3か月後に同マウスの認知行動や海馬や視床下部における分子発現の変化を検討することにしたとする。
その結果、上顎第一臼歯を喪失した老齢マウスでは顕著に自発行動量、空間作業記憶や運動協調性が低下するとともに、海馬および視床下部における神経栄養因子や神経細胞の減少が観察されたとした。加えて、脳老化の特徴の1つであるアストロサイトの増加(アストログリオーシス)が亢進することも発見されたという。
なお、研究チームでは、今回の研究成果について、口腔ケアに留意し、自分の歯を健康に保ち続けることが脳の健康維持に重要であることが示されているとしている。