理化学研究所(理研)は、放射性同位体の崩壊により、窒素を含まない化合物からアミノ酸が直接生成される新しい反応経路を提案し、これを計算機シミュレーションにより検証したことを発表した。

同成果は、理研 生命機能科学研究センター(BDR)健康・病態科学研究チームの福地知則研究員、同・渡辺恭良チームリーダー、理研 BDR 分子標的化学研究チームの丹羽節 副チームリーダー(現・客員研究員/東京医科歯科大学(TMDU) 生体材料工学研究所(IBB)生命有機化学分野 准教授兼任)、同・細谷孝充チームリーダー(TMDU IBB 生命有機化学分野 教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、日本物理学会が刊行する物理学全般を扱う欧文学術誌「Journal of the Physical Society of Japan」に掲載された。

生物の基礎を成すタンパク質は、約20種類のアミノ酸からなる。そのためアミノ酸は生命の最小単位ともいえるが、その起源に関するこれまでの仮説では、アミノ酸を構成する窒素、炭素、酸素、水素を含む分子をもとに生成された可能性が示されている。

一方、自然界に存在する炭素の放射性同位体である「14C」は、半減期約5730年でβ崩壊し、窒素14(14N)に遷移することがわかっている。これは、14Cを含む分子において、14Cがβ崩壊した後も分子内にとどまれば、その部分が14Nに置き換わった分子へと変化することを意味する。

そこで研究チームは今回、「窒素を含まない有機分子の『カルボン酸(R-COOH)』に14Cが含まれていた場合、これが14Nに置き換わることでアミノ酸が生成される」という仮説を立て、今回、このような現象が実際にどれくらいの確率で起こり得るのかを理論的に検証することにしたという。