国立天文台(NAOJ)は4月26日、NASAのハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー赤外線宇宙望遠鏡(2020年1月に運用終了)での2次食観測法により得られた25個の“灼熱の巨大ガス惑星”であるホットジュピターに対する赤外分光観測データに、独自開発の解析法「大気リトリーバル法」を適用することで、これまで知られていなかったホットジュピターの大気の温度構造や化学的性質の系統的な特徴を抽出することに成功したと発表した。
同成果は、NAOJ 科学研究部の生駒大洋教授など、14名の研究者が参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Supplement Series」に掲載された。
2022年、系外惑星の数が5000個を突破し、惑星系が実に多様であることがわかってきた。しかし、太陽系と類似の構造を持つ惑星系は見つかっておらず、系外惑星の発見前は標準的な惑星系と考えられてきた太陽系に対する見方が大きく変容しつつある。
太陽系に存在しないタイプの系外惑星の1つに、ホットジュピターがある。巨大ガス惑星でありながら、太陽~水星間よりも近い距離で中心星を短時間で公転しているという、太陽系的な見方をすれば“非常識な”惑星であり、あまりにも近距離で公転しているために表面は中心星に激しくあぶられ、中には大気の表面付近が鉄ですら溶けるような高温になり、蒸発し続けている惑星もあると考えられている。
巨大ガス惑星は、水が氷として存在できる寒冷な領域であるスノーライン(太陽系なら小惑星メインベルトと木星の間ぐらい)の外側で形成されるとされるが、それが非常に熱い領域である中心星の至近距離で公転しているということは、大きく星系内を移動した可能性が示唆されており、それまで惑星は形成された軌道からあまり動かないという惑星形成の考え方に大きな影響を与えることとなった。こうした背景から、その成因や性質に大きな関心が寄せられているものの、1つ1つの惑星の性質を観測から解明することは困難であり、新たな研究手法が求められていた。