今回の研究では、65歳以上の健常高齢者男性42人がNMN摂取群(250mg/日)とプラセボ摂取群にランダムに割り付けられ、NMNあるいはプラセボの摂取が最長12週間行われた。

6週間(NMN群n=21、プラセボ群n=21)あるいは12週間(NMN群n=10、プラセボ群n=10)の摂取の後、一般血算(赤血球、白血球、血小板などの数)、生化学検査項目の変化、全血におけるNAD+の変化、筋力の変化(30秒間椅子立ち上がりテスト、歩行速度、握力)、生体インピーダンス法による体組成の変化、CTによる脂肪肝、内臓脂肪量の変化、聴力変化などについての評価が実施されたところ、最長12週間のNMN経口摂取では、血液検査の結果を含めて明らかな有害事象は認められなかったほか、プラセボを経口摂取した群と比較して、NAD+およびNMNなどのNAD+前駆体の血中濃度の上昇が確認されたという。

  • 試験開始後12週での血中NAD+濃度

    試験開始後12週での血中NAD+濃度(n=10)。NM群の血中NAD+濃度は、プラセボ群に比べて2倍程度にまで増加した(p<0.001) (出所:プレスリリースPDF)

また、NMNの経口摂取が健康な高齢男性の骨格筋量に及ぼす影響調査を目的に、主要評価項目として骨格筋量指数と部位別筋肉量を測定し、NMN群とプラセボ群の開始前、6週目、12週目の平均値を混合効果モデルおよびMMRM統計解析手法を用いた評価が行われたところ、いずれの解析においても、骨格筋量変化に有意な差は認められなかったという。

さらに、運動機能の調査のために、歩行速度、30秒椅子立ち上がりテスト、握力を評価し分析したところ、NMN摂取後に歩行速度および左握力テストの有意な改善が認められました一方で、そのほかの項目については、NMN摂取群で有意な変化を認めるような項目はなかったものの、右聴力においては、統計的に有意ではないものの、改善傾向が認められたとしている。

研究チームでは今回の研究成果を踏まえ、NMNを継続的に経口摂取することは、サルコペニアのような加齢に伴う筋力低下の予防においては有効な手段であると考えられるとしており、今後のさらなる超高齢化を踏まえ、高齢者を対象としたNMN内服による抗加齢効果が、健康寿命の延長や社会全体の生産性の向上につながることが期待されるとしている。