そこで研究チームは今回、ハッブル宇宙望遠鏡の大量のアーカイブデータの再解析を実施。宇宙初期におけるミッシング・リンクであった、爆発的星形成銀河と明るいクェーサーをつなぐ天体であるGNz7qの発見に成功したという。電波望遠鏡を用いた分光観測から、GNz7qはビッグバンからわずか7億5000万年後に存在していたこともわかっている。
また、X線から電波に至るGNz7qの電磁波スペクトルの特性が、理論シミュレーション予測とよく一致していたことから、同天体が宇宙初期の爆発的星形成銀河の中心部で、急成長しているブラックホールの最初の観測例であることが示唆されたとしている。GNz7qは、宇宙初期で見つかっている超大質量ブラックホールの先駆体と考えられるという。
さらに、GNz7qは超大質量ブラックホールの起源に迫るための重要な天体であるだけでなく、これまで最もよく研究されている天域の1つ、GOODS-North領域で発見されたことも天文学者に驚きを与えたとする。GOODSとはGreat Observatories Origins Deep Surveyの略で、ハッブル宇宙望遠鏡などの多数の宇宙望遠鏡と、すばる望遠鏡などの多数の地上の大型望遠鏡による、多波長観測を組み合わせた探査であり、北天と南天に探査域がある。
GOODS-Northという限られた探査領域でGNz7qが発見されたことは単なる偶然とは考えにくく、むしろこのような天体の出現率は、これまで考えられていたよりもかなり高い可能性があるという。
実際にGNz7qは、宇宙初期の明るいクェーサーを識別するために通常使われる特徴に欠けていたが、GOODS-North領域でこれまで取得されていた、ほかに類を見ないほど詳細な多波長のデータセットのおかげで、初めての発見につながったとする。
なお、すばる望遠鏡の多天体近赤外撮像分光装置「MOIRCS」で得られたKsバンド(2.15μm)の深い撮像データは、GNz7qのスペクトルエネルギー分布の解析において、ブラックホールと、爆発的星形成を起こしている母銀河の成分を分離することに貢献したという。
研究チームは今後、類似の天体を系統的に探索し、それらの天体をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の分光装置で詳細に調べたいとしているほか、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」を用いた観測でも宇宙初期に100個以上という大量のクェーサーが見つかっており、アルマ望遠鏡や、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追観測が予定されていることから、これらの望遠鏡を組み合わせた、多波長での詳細な解析で、GNz7qのような天体がさらに続々と見つかる可能性があるとしており、これらの活動を通じて、急速に成長しているブラックホールが、実際にどの程度存在していて、宇宙初期での超巨大ブラックホールの急成長を支えていたかについて、統計的にも調べることが可能になっていくことが期待されるとしている。