米Matterport(マーターポート)は4月14日、日本法人の設立を発表した。同日には記者発表会が開かれ、同社の事業戦略と新製品が発表された。

Matterportは、空間をカメラで撮影することで、高精度なデジタルツインを作成できるソフトウェアプラットフォームを提供する企業だ。

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2011年に米国法人設立。現在は177カ国以上にサービスを展開しており、不動産業・建設業・宿泊業・小売業・製造業を中心に50万人以上のユーザーがいる。2021年のARR(年間経常収益)は128億円となり、アカウント契約者数は98%、売上高は141%のプラス成長となった。今後は空間情報のデータ化に加えて、データ解析サービスを提供する「データフィケーション」事業も展開する予定だ。

  • 米Matterportの業績ハイライト

「ウォークスルー」とデジタルツインを俯瞰できる「ドールハウス」が特徴

2017年に日本オフィスが立ち上げり、サービス提供を開始。現在では不動産業、ハウスメーカー・デベロッパー、建設・建築、イベント、小売り、製造業、宿泊業などで活用されている。

日本では空間を3D撮影するための専用カメラ「Matterport Pro2」や撮影代行サービスを販売するほか、画像分析・合成処理・配信のためのクラウドシステム、機能拡張のための開発環境など、デジタルツイン作成に必要なさまざまなサービスを提供する。

Matterport Pro2の販売価格は40万8000円、クラウドシステムのサブスクリプション利用料は一般ユーザー向けが月額1200円~で、中小企業向けが月額8300円~となる。なお、すべての機能が利用できる無料のお試しプランも用意されている(作成・保持できるデジタルツインは1つだけ)。

  • マーターポートが提供するサービスとビジネスモデル

マーターポート日本法人の執行役員社長を務める蕭 敬和(しょう けいわ)氏は、「通常のデジタルツインは360画像の画面遷移となるが、当社のデジタルツイン『ウォークスルー』では、空間の中を歩いているかのようなリアル感のある3D空間を作成し、その中をスムーズに移動できる」と同社のデジタルツインの特徴を語った。

  • マーターポート 執行役員社長 蕭 敬和氏

  • 「ウォークスルー」のイメージ(三菱地所レジデンスでのVRモデルルーム事例)

また、マーターポートでは、デジタルツインを立体的に把握できる「ドールハウス」という機能が標準装備されている。同機能では、デジタルツイン化した空間を俯瞰したり、階層構造を把握したりできる。

  • 「ドールハウス」のイメージ(住宅)

日本法人では販売チャネルの拡大と業務内製化への活用を推進

日本法人では、国内の販売チャネル・販売エリアの拡大に着手する。従来は首都圏を中心に特定の業界向けに販売をしてきたが、今後は全国エリアへの販売を強化する。

そのために、全国をカバーする流通販売会社との販売契約・代理店制度の確立を進め、サービスを提供する業界・業種も拡大するという。さらに、企業内部の業務へのデジタルツイン活用支援にも力を入れる。

「日本では販売促進でのVR(Virtual Reality)活用が主流だが、当社は企業の業務の内製化にフォーカスを当て、デジタルツインの活用を推進していきたい。コスト削減や業務効率化、意思疎通・判断の迅速化に加え、外部に非公開の環境へのデジタルツイン導入でも内製化が役立つはずだ」と蕭氏は述べた。

  • 業務内製化へのデジタルツイン活用例

スマホでの空間撮影をサポートする自動回転雲台「Matterport Axis」

説明会では、内製化支援のための新製品として「Matterport Axis」が紹介された。同製品は、スマートフォンでの空間撮影用の自動回転雲台となる。Andoroid、iOS端末に対応。米国・欧州で先行発売を開始し、日本では5月中旬以降に発売される。価格は1万円台を予定している。

  • 「Matterport Axis」(左)と「Matterport Pro2」(右)を紹介する蕭氏

スマートフォンを自動雲台に取り付けてBluetoothで接続し、雲台が自動回転することで、専用の3Dカメラと同様に空間の撮影を行える。蕭氏は、「スマートフォンを人が手で持ち、周囲を撮影してもデジタルツインを作成できるが、Matterport Axisを使うことで、より高速に一貫性のある撮影が可能となる」と説明した。

雲台は約20秒ほどで1周し、空間全体のスキャンが終了するまで約1.5メートルから2メートル間隔で移動させて撮影を続ける。スキャン完了後にWeb閲覧用のURL発行のほか、点群データでの書き出しも可能だ(拡張子は.xyz、.rcp、.obj、.rvt、.e57に対応)。

説明会の最後に、蕭氏は製品やサービスの販売・流通の4~5倍への拡大を日本法人の経営目標として掲げた。

「デジタルツインがさまざまな業界、業務、用途や目的で利活用されるように導入支援やサポート体制を拡充するとともに、啓蒙および提案活動も広く行い、新規顧客獲得と継続利用顧客の両立を実現していきたい」(蕭氏)