NECと南紀白浜エアポートは4月12日、南紀白浜空港における滑走路の点検業務の効率化や精度向上に向け、「長距離3D-LiDAR」を活用して滑走路上の異物検知を行う実証実験を2022年4月より実施する覚書の締結を発表した。
長距離3D-LiDARは、レーザー光を照射し物体からの反射光を捉えることでその物体までの距離を測定する技術である3D-LiDARに、長距離・大容量光送受信技術と3D点群データ解析技術の2つといったNECの独自技術を組み合わせたセンサシステム。 通常の3D-LiDARでは検知可能距離が200m前後のところ、同システムでは最長1kmの範囲が検知可能だという。またレーザー光は暗闇でも測定可能で、夜間時間帯の異物検知が可能となる。
実証の背景として、空港における飛行機の安全と運航効率を確保する重要な業務である滑走路の定時点検業務は、現在1日2回滑走路全面を車両で往復し、職員が目視で異物が無いことを確認しており、人手・目視での点検は担当職員にかかる「見落としは許されない」という心理的ストレスが負担となっている。また地方空港では多数の点検業務や保守業務を限られた人員で行うため、業務効率の面でもデジタル技術を活用した業務の高度化および効率化が求められているという。
NECと南紀白浜エアポートは2020年から、さまざまなデジタル技術を活用し、滑走路の点検業務効率化、予防保全に取り組んでいる。滑走路を走る点検車両のドライブレコーダーを活用した「くるみえ for Cities」による点検業務効率化や、衛星合成開口レーダーを活用した空からの滑走路面の変動や空港周辺の建築物や木々などの障害物の検知に向けた取り組みが進められており、今回の長距離3D-LiDARによる実証も夜間の空港維持管理業務においてさらなる高度化・効率化の一翼を担う見込みだ。
長距離3D-LiDARの活用により、レーザー照射機器から1km圏内にある異物の位置や距離だけでなく、形状まで数cm単位で立体的に管理端末画面上から確認ができる上、レーザー光により飛行機の運航が比較的少ない夜間時間帯での異物検知点検が可能となる。同実証では、職員の目視確認の省力化や確認作業時間の短縮化などの業務効率化、および検知制度の向上が評価・検証される見通しだ。
また、1台当たり1km先までの広範囲に対応するレーザー照射機器は、従来のレーダーを活用した検知システムに比べ機器の設置台数が減り、設置や運用などのトータルコスト削減も期待できるとのことだ。
NECと南紀白浜エアポートは今後、飛行場周辺の一定の空間を無障害の状態にする制限表面監視にも長距離3D-LiDARを活用し、目視確認の省力化、測定精度の向上を検討するとしている。