国立天文台(NAOJ)は4月12日、VLT望遠鏡、ジェミニ南北望遠鏡、すばる望遠鏡、ケック望遠鏡、NASAのスピッツアー宇宙望遠鏡などの望遠鏡を用いた過去約20年にわたる中間赤外線観測データを網羅的に解析した結果、海王星の大気温度がその間に予想外に変動していたことを明らかにしたと発表した。

同成果は、英・レスター大学のマイケル・ローマン博士、NASA ジェット推進研究所のグレン・オートン博士、東北大学の笠羽康正博士、NAOJ ハワイ観測所の藤吉拓哉博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、惑星科学とその関連分野を扱うオープンアクセスジャーナル「The Planeatry Science Journal」に掲載された。

海王星の自転軸は約28度という地球に近い傾きがあり、四季が訪れることが知られている。ただし、海王星の1年は地球時間にして約165年ほどで、地球と比べて遥かにゆっくりと季節が移り変わっていくことため、良く分かっていないことも多い。

  • 地球から見たときの海王星の形状図

    (左)地球から見たときの海王星の形状図。自転軸の傾きにより南極が見えており、観測期間の2003~2020年はこの見え方からほぼ変化がない。(中央)可視光による海王星。ハッブル宇宙望遠鏡の複数の画像から合成された。(右)中間赤外線で観測された2020年の海王星。すばる望遠鏡のCOMICSによるもの。中間赤外の画像では、海王星の南極が明るく輝いていることがわかる (C)Michael Roman/NASA/ESA/STSci/M.H. Wong/L.A. Sromovsky/P.M. Fry (出所:すばる望遠鏡Webサイト)

そうした長い時間をかけて変化していくと思われていた海王星だが、今回の研究から、たとえば成層圏の平均気温は、2003年から2018年の間におよそ8度ほど下がったことが確認されたという。2003年の南半球は初夏にあたり、地球から見えるエリアの平均気温は徐々に高くなると考えられていたが、その逆の結果が示されたこととなる。

その後も、2019年のジェミニ北望遠鏡と2020年のすばる望遠鏡の観測から、海王星南極域での成層圏の気温が2018年から2020年にかけて11度ほど上昇し、これまでの冷却傾向が逆転したことも判明。このような極域の温暖化が海王星で見つかったのは、初めてのことだという。