違法な物品や企業やユーザーから盗み出した機密情報などの売買に利用される取引所は、一般的に「ダークウェブ市場」と呼ばれており、匿名性が高く身元が追跡できない仕組みでの取引方法を提供している。そのような取引所は世界中に無数に存在するが、ロシアを拠点とする「Hydra」(ヒドラ)は世界最大規模のダークウェブ市場と言われている。
TheHackerNewsが4月5日、「Germany Shuts Down Russian Hydra Darknet Market; Seizes $25 Million in Bitcoin」において、ドイツ連邦刑事庁(BKA:Bundeskriminalamt)がHydraの正式な閉鎖を発表したと伝えた。
BKAの発表によれば、2021年8月以降、ドイツのサイバー犯罪対策中央局は米国の当局と協力してHydraの捜査を進めており、その一貫としてHydraが所有するサーバを押収したという。このサーバの押収が、サイトの事実上の閉鎖につながったとBKAは報告している。
Hydra上の取引における主要な決済手段はビットコインをはじめとする暗号資産であり、その年間取引量は2021年末までに16億ドルを超えたと推定されている。ロシアの暗号資産取引におけるHydraの影響力は大きく、例えば2019年にロシアの暗号資産取引所が直接受け取った不正ビットコインは、9割近くがHydra経由で取引されたものだったことが分かっている。BKAは、今回の捜査で2300万ユーロ相当のビットコインを押収したことも報告している。
BKAの発表と時を同じくして、米国の財務省外国資産管理局(OFAC)もHydraおよびロシアの暗号資産交換サイト「Garantex」に制裁を科すことを発表した。
ドイツおよび米国当局のこれらの活動は、ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁に強く関連している。これは、ロシアが暗号資産を利用して経済制裁を回避することを防ぐことにつながるからだ。
TheHackerNewsによれば、現在はHydraのマーケットプレイスを訪問すると「プラットフォームと犯罪コンテンツは連邦刑事庁の法執行によって押収された」という旨のバナーが表示されるようになっているとのことだ。