F-Secure(エフセキュア)はこのほど、都内で記者説明会を開催し、B2B向けとB2C向けに分社化すると明らかにした。B2C向けはエフセキュアとして継続し、B2B向けは新たに「WithSecure(ウィズセキュア)」としてスタートする。なお、日本法人は「ウィズセキュア株式会社」となる。

  • B2Bの会社名を「WithSecure」とした

    B2Bの会社名を「WithSecure」とした

常にグッドパートナーとして

すでに、同社は昨年11月にB2Bに特化した新ブランド導入を発表している。WithSecure(F-Secure) アジアパシフィック地域担当 VPのジョン・デューリー氏は「当社は創業以来、アンチウイルス製品を提供する会社として認知されている。しかし現在では、当社のビジネスはアンチウイルスだけでなく、アンチウイルスのエフセキュアを過去のものとし、新しい認知を得ることが重要だ。また、B2Bビジネスに重点を置きたいと考えている。私たちの新ブランドが重要視することはお客さまとビジネスパートナーとの『グッドパートナーシップ』だ」と力を込める。

  • WithSecure(F-Secure) アジアパシフィック地域担当 VPのジョン・デューリー氏

    WithSecure(F-Secure) アジアパシフィック地域担当 VPのジョン・デューリー氏

ウィズセキュアではパーパスに「デジタル社会における信頼の構築を支援する」、ビジョンに「サイバー攻撃により、誰も深刻な被害を受けない未来を作る」をそれぞれ掲げている。デューリー氏は「市場においてサイバーセキュリティのベストパートナーであるという認知を拡大していきたい。私たちはユーザー、パートナー、市場に対して常にグッドパートナーであることを約束するとともに、実績を作っていく」と述べた。

ビデオメッセージを寄せたF-Scure 創業者兼会長のリスト・シラスマ氏は「IoT化やクラウドによる拡張性のあるインフラ、データの取得と分析の拡大、ネットワーク接続とデバイスの増加、進化し続けるサイバー脅威の 状況は、新しい市場、製品、サービスにとって大きな機会を生み出し、テクノロジー企業のセグメント化の傾向を後押ししている。私たちにとって今こそB2CとB2Bの2つの市場に絶対的なフォーカスを当てるべき時だ。どちらも大きな市場規模、かつ私たちが大きなプレゼンスを発揮できる分野であり、コンパクトで機敏な2つの会社がお客さまとパートナーに対して、より良いサービスを提供し、競争力を高め、新しいビジネスチャンスに迅速に対応していく」と述べていた。

  • F-Scure 創業者兼会長のリスト・シラスマ氏

    F-Scure 創業者兼会長のリスト・シラスマ氏

また、同じくビデオメッセージを寄せたWithSecure(F-Secure) プレジデント兼CEOのユハニ・ヒンティッカ氏は「私たちは複雑化するサイバーセキュリティの脅威を理解し、それに対処するために企業が必要とするパートナーシップを提供する。『グッドパートナーシップ』は良いセキュリティを意味し、良いセキュリティはビジネスが機能することを意味する。WithSecureは新しいB2Bサイバーセキュリティブランドというだけでなく、サイバーセキュリティに対する新しいアプローチであり、私たちが目指すものだ」と語っていた。

  • WithSecure(F-Secure) プレジデント兼CEOのユハニ・ヒンティッカ氏

    WithSecure(F-Secure) プレジデント兼CEOのユハニ・ヒンティッカ氏

ウィズセキュアでは、製品導入だけで終わらせずにセキュリティの成果を提供する「アウトカムベースセキュリティ」に加え、「直感的で使いやすいテクノロジーの追求」、「サイバーセキュリティ最前線の現場で培われたノウハウ」、グッドパートナーシップの考えのもとステークホルダー間の協力や協調を介してセキュリティの能力「コ・セキュリティアプローチ」の4つの要素を組み合わせて提供するという。

  • WithSecureが重視する4つの要素

    WithSecureが重視する4つの要素

WithSecureのポートフォリオ

ウィズセキュアの主要ポートフォリオは、昨年5月に発表したクラウドベースの企業向けサイバーセキュリティサービスのプラットフォームである「WithSecure Elements」、セールスフォース環境に対するマルウェア/ランサムウェア対策サービスの「WithSecure Cloud Protection for Salesforce」、コンサルティングサービスを提供する「WithSecure Consulting」、マネージドサービスの「WithSecure Managed Services」の4つだ。

  • WithSecureのポートフォリオ

    WithSecureのポートフォリオ

説明会では、WithSecure Elements、WithSecure Cloud Protection for Salesforce、WithSecure Consultingが紹介された。

WithSecure Elements

WithSecure(F-Secure) サイバーセキュリティ技術本部長の島田秋雄氏は「サイバーセキュリティは複雑化するとともに、年々その複雑さは増加している。大半の企業において自社のセキュリティ対策実施はハードルが高いと感じており、無計画なセキュリティ対策は状況をさらに悪化させるだけだ。その解決策としてWithSecure Elementsを提供している」と説明。

  • WithSecure(F-Secure) サイバーセキュリティ技術本部長の島田秋雄氏

    WithSecure(F-Secure) サイバーセキュリティ技術本部長の島田秋雄氏

WithSecure Elementsは、エンドポイント保護(EPP)、エンドポイントの検知と対応(EDR)、脆弱性管理、Microsoft Office365保護を組み合わせたクラウドベースのセキュリティプラットフォームとなり、エンドポイントのセキュリティ対策を1つのエージェントに統合している。

  • WithSecure Elementsの概要

    WithSecure Elementsの概要

成長に合わせた製品設計、可視性と知見を提供する統合型セキュリティプラットーフォームとなり、シングルエージェントでテレメトリとAIによるセキュリティ解析を行い、単一コンソールの「WithSecure Elements Security Center」において統合化した状況認識を可能としている。

  • WithSecure Elementsはサイバーセキュリティ機能を統合化している

    WithSecure Elementsはサイバーセキュリティ機能を統合化している

WithSecure Cloud Protection for Salesforce

また、WithSecure Cloud Protection for Salesforceは、セールスフォース環境におけるアップロード/ダウンロードファイル、URLのセキュリティチェック機能を提供。

  • WithSecure Cloud Protection for Salesforceの概要

    WithSecure Cloud Protection for Salesforceの概要

WithSecure(F-Secure) 法人営業本部 シニアセールスマネージャーの河野真一郎氏は「セールスフォースが自社で構築しているデータセンター環境やネットワーク環境、外部からの攻撃に対しては非常に堅牢なセキュリティ対策を施しているが、クラウド上のコンテンツに関する安全性の確保についてはユーザー側の責任としている。つまり、ユーザー側でのクラウド環境、セールスフォース環境でファイルをアップロードする場合、そのファイルに対するセキュリティ対策はユーザーが行うように推奨している」と話す。

  • WithSecure(F-Secure) 法人営業本部 シニアセールスマネージャーの河野真一郎氏

    WithSecure(F-Secure) 法人営業本部 シニアセールスマネージャーの河野真一郎氏

同サービスは、APIで連携した同社のセキュリティクラウド上にある脅威知見、マルチエンジンアンチウイルス、クラウドサンドボックスに送られたファイルに対して、プロファイルにもとづき、複数のステージで分析が行われる。すでに、2021年3月~8月の期間で保護したユーザー数は約89万人、保護した企業数は816社、検知した有害なファイルは582個、検知した有害なURLは約7万などとなっている。

  • 2021年3月~8月の期間におけるWithSecure Cloud Protection for Salesforceの実績

    2021年3月~8月の期間におけるWithSecure Cloud Protection for Salesforceの実績

WithSecure Consulting

WithSecure Consultingについて、WithSecure(F-Secure) プリンシパルセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏は「当社のコンサルティングはセキュリティ戦略&リスク管理、セキュリティ保険、セキュア開発、セキュアクラウド化、アタックパスマッピング、インシデント対応&レスポンス、レッド・パープルチームなどのポートフォリオを持ち、環境と重要なデータ・システムを統合できるためのサービスを提供している。製品だけでは守り切れない部分をわれわれと一緒に守りましょうということだ」と説く。

  • WithSecure(F-Secure) プリンシパルセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏

    WithSecure(F-Secure) プリンシパルセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏

同氏によると、約15カ国の専門家200人が技術的な優秀性や標準との準拠方法、セキュリティ経営の経験により、それぞれの専門性と特技を活用しており、グローバルチームの専門知識を日本において日本語で提供している。

例えば、航空系の機内IFE(In-Flight Entertainment:機内エンターテイメント)/システムのセキュリティやPCI-DSSにもとづくカードデータ保護、変電設備、製造施設、電車制御システム用のICS(Industrial Control System:産業用制御システム)であってもユーザーとともに守りきるという。

国内では、30件以上の車載用ECUのハードウェア、ファームウェアとアプリケーションのセキュリティ診断、金融機関系システムのオンプレミスシステムとAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure環境のセキュリティ診断、セールスフォース環境のセキュリティ設定・構成やカスタマイズされた部分のセキュリティ診断、工場用機器とシステム構成の脅威分析、セキュリティ診断などのコンサルティングプロジェクトの事例が挙げていた。

  • 国内の事例

    国内の事例

なお、説明会には駐日フィンランド大使のペッカ・オルパナ氏が出席し「エフセキュアはフィンランドが誇る企業の1つだ。サイバーセキュリティ分野で30年以上にわたり、個人、企業に提供してきた。WithSecureもビジネス、デジタル社会の保護という重要な役割を担い、信頼関係を構築していくだろう」と述べていた。

  • 駐日フィンランド大使のペッカ・オルパナ氏

    駐日フィンランド大使のペッカ・オルパナ氏

また、WithSecureではグローバルにおいてブランドアンバサダーを採用しており、日本のアンバサダーは鎌倉手毬 代表取締役 和菓子家の御園井裕子氏が務めることが発表されている。

  • 国内の事例

    アンバサダーの鎌倉手毬 代表取締役 和菓子家の御園井裕子氏