東京大学医学研究所は3月10日、国内で増加傾向が続く新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株「オミクロン株BA.2系統」に対する承認済みの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬各種の効果に関する調査結果を公表した。

同成果は、東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループによるもの。詳細は、3月9日付の米国医学雑誌「New England Journal of Medicine (NEJM) 」(オンライン版)に掲載された。

今回の研究では、4種類の抗体薬(バムラニビマブ・エテセビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブ)がオミクロン株BA.2系統の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかが調べられたほか、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)の効果解析が行われたという。

その結果、バムラニビマブ・エテセビマブのオミクロン株BA.2系統に対する中和活性が低いことが判明したほか、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブは、BA.2系統株に対する中和活性を維持していることが判明したとする。ただし、これらの抗体薬のBA.2系統株に対する効果は、従来株(初期に発見された株)に対する効果と比較して低いこともわかったとする。

また、3種類の抗ウイルス薬の効果としては、いずれも培養細胞におけるオミクロン株の増殖を抑制することが示されたという。

なお、研究グループでは今後も、新型コロナ治療薬がオミクロン株BA.2系統の増殖を効果的に抑制するかどうかを新型コロナ動物モデルを用いて検証していく予定としている。

  • 新型コロナ・オミクロン株BA.2系統に対する各治療薬の効果の調査結果

    新型コロナ・オミクロン株BA.2系統に対する各治療薬の効果の調査結果 (出所:東京大学医科学研究所Webサイト)