西日本電信電話(NTT西日本)、理化学研究所、福島大学、北海道大学、東京大学、前川総合研究所、大阪環農水研、筑波大学ら8組織は2月21日、「果樹の農業生態系の各層(土壌および微生物叢、作物)のデジタルデータ化およびマルチオミクス解析」に関する共同研究を開始すると発表した。

共同研究では、「農業の自然循環機能の増進」「環境負荷の低減」「生物多様性の保全に配慮したネイチャーポジティブな環境再生型農業の普及拡大」の3つのテーマに取り組むという。ここで得られたデータは、NTTグループが提唱するIOWN構想の最先端テクノロジーと組み合わせて、農業のデジタルツインコンピューティングを目指すとのことだ。

ネイチャーポジティブとは、「自然に良い影響をもたらす」「自然を優先する」といった意味を指す。

  • 農業生態系のデジタル化のイメージ

今回の共同研究では、果樹園地の土壌に生息する微生物叢である土壌マイクロバイオーム(土壌微生物の多様さ)に基づいた精密診断法の確立を目指す。これにより生産者の安定的な果樹栽培を支援するとともに、環境再生につながる農業を推進するという。温州ミカンを研究対象とし、日本全国の有機栽培、特別栽培、慣行栽培の農場から土壌と作物の両方を収集して科学的に分析し数値化する。

土壌微生物叢については、化学性や物理性に加えて、従来の土壌分析では実施されていない土壌マイクロバイオームの評価を実施する。評価された土壌で栽培された作物は収量や糖度、酸度、香り成分など品質を多角的に評価することで、高品質な作物が栽培される土壌条件を探索する予定だ。また、温室効果ガスなどの環境負荷の定量化も試みるという。

これらの解析データは主成分分析や相関ネットワーク解析などによる統合マルチオミクス解析を実施し、果樹の収量や品質に影響を与える主要因子を探る。さらに、多様な栽培方法の農場から得た土壌や微生物叢と、作物のデジタルデータを格納した土壌データベース、および土壌AI(Artificial Intelligence:人工知能)エンジンによる精密診断手法の開発を目指す。

  • 共同研究における各組織の役割