NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、NTTコムウェアの3社は昨年の10月25日、新ドコモグループとして事業領域を拡大していくと発表した。そこで、昨年6月、NTTコムウェアの新社長に就任した黒岩氏に、新ドコモグループでの同社の役割と戦略を聞いた。

NTTコムウェア 代表取締役社長 黒岩真人(くろいわ まさと)
昭和33年9月 鹿児島県生まれ
昭和56年4月 日本電信電話公社入社
平成9年9月 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションウェア(現エヌ・ティ・ティ・コムウェア) 設備系システム事業部 シニアマネージャ
平成12年9月 エヌ・ティ・ティ・コムウェア NTT営業本部 担当部長
平成16年7月 レゾナント・ソリューション事業本部 光BPMソリューション部長
平成21年6月 経営企画部長 NGN-OpS事業本部 営業企画部 担当部長兼務
平成23年6月 取締役 経営企画部長
平成25年6月 取締役 通信ビジネス事業本部 営業部長
平成26年6月 取締役 ネットワーク事業本部長
平成27年6月 常務取締役 ネットワーク事業本部長
平成29年7月 代表取締役副社長 テレコムビジネス事業本部長
令和3年6月 代表取締役社長 現在に至る

改めて、新ドコモグループでのNTTコムウェアの役割を教えてください。

黒岩氏:新ドコモグループではスマートライフ領域、法人領域、通信領域があり、スマートライフに関しては、インハウスで開発するためのチームをつくり、サービスを創出していくことが1つの柱となります。法人向けについては、現状もNTT Comさんとはソリューションの共創を行っており、それを強化して進めていきます。昨年7月にビジネスインキュベーション本部を立ち上げ、ソリューション強化を図っていますが、そこをさらに活性化させていきます。

通信は、IOWN(アイオン)や6Gに代表される今後のプラットフォームは、われわれも参画して構築していこうと思っています。

新ドコモグループはITの規模も大きくなるので、IT戦略の策定や実行を中心的に担い、DXを加速していこうと思っています。

  • 新ドコモグループの中のNTTコムウェアの役割

NTTコムウェアでは、今後、ドコモのコンシューマ向け領域(スマートライフ)の開発も行うので しょうか?

黒岩氏:昨年7月に新組織「NTT IT戦略事業本部」を創設していますが、その中にアジャイル開発チームもあります。このチームがスマートライフ事業を担っていきます。アジャイル体制は現在約120名ですが、今後は採用も増やし、社内のリソースシフトも行い、強化していきます。2025年度くらいには、1000名以上の規模にしたいと思っています。

新ドコモグループでは、3社間で人材の移動もあるのでしょうか?

黒岩氏:3社間で人材の交流を進めていこうという話は出ていますが、具体的な部分は未定です。3社間でお互いのことを知っていくことが重要だと思います。

デスクトップサービスなどドコモ・システムズと重複するサービスもありますが、それはどうするのでしょうか?

黒岩氏:サービスの整理、統合については、今後、検討していきたいと思います。

今後はドコモグループ以外の業務は行わないのでしょうか?

黒岩氏:ドコモグループ以外のNTTグループ向けでは、F2S(Fit to Standard)変革、事業効率化、インフラオペレーションなど、競争力の源泉となるITの実現をやります。NTTグループ以外の一般企業についてもこれまで通り進め、とくに先端事例を中心にやっていこうと思っています。

アジャイル開発人材5,000人、データ活用人材5,000人の確保の見通しは?

黒岩氏:コムウェア単体でどれくらいに増やしていくかは、今後検討していきます。昨年の10月25日の会見で説明した、2025年度にアジャイル開発人材5,000人、データ活用人材5,000人は、新ドコモグループ全体での人数になります。ただ、これらの半数以上はコムウェアが育成していこうと思っています。コムウエア以外の人材では、アジャイル開発人材だと、プロダクトオーナーのような人材になりますので、ドコモが中心となります。データ活用人材は、ドコモの支店でも必要なると思います。

アジャイル開発人材とデータ活用人材は、新コモグループの発表前から重要だと考えていました。ビジネス協創のためには、「Business Innovation」と、それらを下支えする「Agile」、「DataScience」、「Security」が柱だと思っています。また、アジャイル開発だけでなく、UI/UXやデザイン思考も重要だと思っています。データサイエンスについては、今後データドリブン経営になると思いますので、お客様のビジネスイノベーションを支援していこうと思っています。

  • ビジネス協創を実践する人材育成の取り組み全体像

今後、どういう領域で自社の強みを発揮されていきますか?

黒岩氏:6G・IOWNはまだまだ先ですので、5Gのオープンエコシステムのオペレーション部分、サービスマネージメント部分を手掛け、それを6Gにつなげていこうと思っています。われわれの得意領域であるマネージメント、データサイエンス、ネットワークを中心にやっていこうと思います。NTTデータさんのように幅広い部分を手掛けるのではなく、ある程度、尖った部分のソリューションを提供していこうと思います。今回、新たな会社に生まれ変わるので、社員には新たな創業としてしっかりやっていこうと訴えています。

法人向けビジネスにおけるNTT Comとの役割分担は?

黒岩氏:基本は、既存のお客様に関しては、引き続き弊社が担当していきますが、NTT Comさんと共通な顧客については、今後、両社で会話をしてから対応を検討していきたいと思います。大手の共通のお客様はNTT Comさんが主導で対応していく方向で検討しています。

中小企業向けビジネスのNTT東西との役割分担は?

黒岩氏:まだ、具体的には決まっていませんが、われわれにも、全国の拠点がありますから、その拠点を活用して、企業を支援することはあると思います。

(なお、昨年の12月14日には、中小企業・地域の営業体制強化のため、NTT Comに「ソリューション&マーケティング本部」を新設し、NTT Comの子会社として「ドコモビジネスソリューションズ」を創設することが発表されている

コロナ禍における勤務体制は?

黒岩氏:基本的に、会議はリモートで行うことにし、取締役会もリモートで行っています。また、新型コロナウィルスが出始めたときに、開発をリモードで行えるようすることに取り組み、協力会社や関連会社の方を含めると、毎日7000名くらいの人がリモートで開発を行っています。

全体の出社率は、現在、首都圏では3割程度になっています。また、リモートに合わせたフロアプランの取り組みを行っており、フリーアドレスにして、気軽にいろいろな人と会話できる環境になっています。リモートワークでは、コミュニケーションが課題になっているので、出勤した場合は、出社した人達で顔を見ながらコミュニケーションを図っていこうという取り組みも行っています。