トヨタ自動車などが設立したトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)を前身に持つ、ウーブン・プラネット・ホールディングス(Woven Planet Holdings)では2021年2月からトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地(静岡県裾野市)で「Woven City(ウーブン・シティ)」の整備を進めている。今回、Woven Cityで提供するサービスの開発を主導する同社 Director, R&Dの大石耕太氏にWoven Cityの構想と開発現場の話を聞いた。

トヨタが推進する「Woven City」

まずは、同ホールディングスとWoven Cityについて整理したい。ホールディングスの前身は、トヨタ自動車とデンソー、アイシンが2018年に自動運転技術の実用化に向けた高品質なソフトウェアを提供するため設立したTRI-ADだ。

2020年1月にラスベガスで行われた「CES 2020」において、トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏が実証実験の都市としてWoven Cityのコンセプトを発表し、同3月にはスマートシティ分野でNTTと業務資本提携で合意している。

  • 「CES 2020」においてWoven Cityのコンセプトを発表するトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

    「CES 2020」においてWoven Cityのコンセプトを発表するトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

そして、2021年1月に事業会社3社を含めた持株会社としてウーブン・プラネット・ホールディングを設立し、新体制に移行した。事業会社は、自動運転技術、高度な安全性を手がけるウーブン・コア(Woven Core)、イノベーション、新企画・製品の考案、Woven Cityを担うウーブン・アルファ(Woven Alpha)、投資、パートナーシップを含むリソースの獲得を行うウーブン・キャピタル(Woven Capital)の3社が傘下となっている。

  • 事業会社の概要

    事業会社の概要

その後、2021年2月に東富士工場跡地に隣接する旧車両ヤードでWoven Cityのフェーズ1の地鎮祭を実施し、着工した。2022年にはフェーズ1の建築工事を開始し、2024年~2025年のオープンを計画している。

また、2021年5月にENEOSと水素エネルギー利活用実証の検討を開始したことを発表。具体的にはWoven Cityにおける水素エネルギー利活用を実証し、運営開始を2023年度中を目標としており、順次トヨタがFC(燃料電池)商用車、定置式FC発電機などの導入を予定。

Woven Cityのビジョンは「ヒト中心のもっといい街をつくる」、ミッションは「『ヒト』『モノ』『情報』のモビリティにおける新たな価値と生活を提案する」、基本コンセプトは「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」の3つだ。

  • Woven Cityの予想イメージ

    Woven Cityの全体イメージ

“ヒト中心の街づくりの実証プロジェクト”と位置付けており、自動運転、パーソナルモビリティ、ロボット、AI技術などをはじめ、さまざまな領域の新技術をリアルな場で実証するという。

地上に自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み、地下にはモノの移動用に1種類の道を整備する。

  • Woven City内のイメージ

まずは、高齢者や子育て世代の家族、発明家などを中心に360人程度、将来的にはトヨタの従業員を含む2000人以上の住民が暮らし、社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境を目指している。2021年9月時点でヘルスケア、農業、教育など、さまざまな分野で4900件程度の個人・法人が問い合わせをしている状況だ。

  • Woven Cityの整備に向けたフェーズ1の概要

    Woven Cityの整備に向けたフェーズ1の概要