2022年の法改正の5つのポイント

①承認制度の廃止

2021年12月31日までは、電子保存の運用を開始する3カ月前までに、「承認申請書」、「事務手続きの概要」を所轄の税務署へ提出しなければならないといった事前承認制度があったが、これが廃止された。企業にとって事実上の待機期間であった同制度が廃止されたことにより、電子帳簿保存の導入が容易なものとなる。

注意したいのは承認制度の廃止の適用期間だ。仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿データは、2022年1月1日以降の開始する事業年度から適用され、取引先から紙で届く領収書や請求書などのスキャナ保存に関しては、同日以降に保存したものに適用される。電子取引におけるデータに関しては、同日以降に行う電子取引に適用されるといった微妙な違いがある。

いずれにしても、2021年12月31日までのものに関しては未適用で、2022年1月1日からのものに適用されるということだ。

②スキャナ保存の要件緩和

先ほどから強調している通り、スキャナ保存の要件が大幅に緩和されることが同改正の大きな特徴だ。入力要件と検索要件の緩和と適性事務処理要件の廃止が実行された。

入力要件の緩和に関しては、従来制度で3日以内である、タイムスタンプの付与期間が最長約2カ月以内に延長され、受領者がスキャナで読み取る際に行っていた書類への自署が不要になった。加えて、タイムスタンプの付与が絶対必要条件ではなくなった。

というのも、電子保存したデータについて訂正または削除を行った事実とその内容を確認できるシステムであれば、その電磁的記録の保存を行うことをもって、タイムスタンプの付与に代えることが可能になるのだ。

ただ、「システムの検証をしないといけないハードルがあるので、タイムスタンプを付与した方が楽なのではないか」(持木氏)といった議論もあるという。

また従来の電子データの検索要件は、取引年月日、勘定科目、取引金額、その国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定する必要があった。加えて、「日付または金額の記録項目を範囲指定で検索できること」、「2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること」、「請求書や領収書など、書類を種類別に検索できること」が必須条件だった。

  • 電子データの検索要件が緩和される

新たな検索要件では、検索項目は取引などの年月日、取引金額、取引先の3項目に限定され、範囲指定や複数項目の組み合わせ検索機能は、国税庁などが電子データのダウンロードを求めた場合に対応することで不要になる。

一番効果が大きいとされているのが適性事務処理要件の廃止だ。改正前では、書類の受領者、経理担当者、それ以外の第3者(監査部など)、合計3名で書類のチェック体制を構築しなければならなかった。また1年に1回以上、処理内容の定期検査の実施しなければならず、定期検査が終わるまでは原本を破棄できなかった。それだけではない。この検査により不備が発覚した場合、経営者を含む幹部に報告の上、原因の究明および改善策を構築する体制を整備しなければならなかった。

  • 適性事務処理要件の廃止

これらすべてが同改正により廃止された。スマートフォンなどを利用した立替精算の申請や、請求書の支払い依頼のフローが簡素化される。経理が請求書の電子データと原本を照合するためにわざわざ出社するといったこともしなくてよくなる。

  • スマートフォンなどを利用した立替精算の申請フロー

  • 請求書の支払依頼フロー

③優良電子帳簿システムで作成された帳簿データの優遇制度

導入している電子帳簿システムによっては優遇措置を受けられる制度も追加された。以下の5つの条件を満たしたシステムは「優良電子帳簿システム」とされる。

1. システム間の相互関係性を確保していること
2. 見読可能性が確保されていること(ディスプレイの画面および書面に見やすい状態で出力できること)
3. 改正後の検索機能が確保されていること
4. 関係書類が備え付けられてること(システム仕様書や操作説明書など)
5. 訂正および削除の履歴が残るシステムであること

これらの条件をすべて満たしているシステムを使用している場合、以下の2つの優遇措置を受けられる。

1. 所得税の青色申告特別控除の控除額65万円の適用を受けられる
2. 所得税・法人税または消費税にかかる修正申告・更生など、申告漏れに課される過少申告加算税が10%から5%減免される

ただし、優良電子帳簿の適用には、あらかじめ納税地の所轄税務署長に届け出することが必要で、仮装隠蔽行為があった場合は減免対象にならないことに注意が必要だ。

④電子取引データの保存の厳格化

自民・公明両党が取りまとめた2021年度税制改正大綱で、電子取引における請求書や領収書などは22年1月から電子保存することが義務付けられた。要件を満たしていなければ罰則の対象にもなる。しかし、先述したとおり、これに2年間の猶予が与えられた。

安堵した企業も多いと思うが、2年後に備え、今一度どのようなデータの保存要件があるのか確認しておくべきだろう。

まず、電子取引もスキャナ保存と同様で、取引の年月日、金額、取引先の3項目で検索できるようにしなければならない。加えて検索は範囲指定ができること、取引先名称も含め2以上の項目で複合条件設定ができるようにする必要がある。

そのほか、電子取引データの授受システムの概要書や、データを閲覧・出力するためのマニュアルを備え付ける必要があり、保存期間中は、電子取引データを14インチ以上のディスプレイ、プリンタに整然かつ明瞭な状態で出力できるようにする。

さらに、電子取引データの取り扱いに関しては、以下の4つの措置が必要となる。

1. タイムスタンプを付与した後にデータを授受する
2. 取引データ授受後、約2カ月以内にタイムスタンプを付与
3. 訂正削除不可、または訂正削除履歴が残るデータの授受
4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備え付け

また、「メールで取引データをやり取りする場合、4つの措置が行われていないケースが多い」(持木氏)ため、適正な保存ができるよう社内規程の整備が必要とされる。何度も言うが、これまでは書面に出力しての整理保存が可能だったが、改正後は基本的に書面保存ができなくなる。

電子帳簿保存対応のシステムを導入していない会社もあるだろう。一般的なパソコン、プリンタを使用しているのであれば、以下の保存方法で対応可能だ。

1. 取引情報のデータ(PDFなど)のファイル名に、規則性をつける(年月日・取引先名・金額など)
2. 「取引の相手先」や「各月」など決めたフォルダに格納して保存する
3. 訂正削除の防止に関する事務処理規程を作成し備え付ける

注意すべきは、税務調査の際に、税務職員からダウンロードが求められたらデータを提出しなければならない点だ。

  • 特別な請求書など保存ソフトを所持していない場合の保存方法

⑤罰則規定の制定

電子保存の厳格化に加えて、罰則規定も明確に制定された。不備が発覚した場合、重加算税の対象になる。具体的には、電子保存された事項に関して、隠蔽、仮装された事実に基づく期限後申告、修正申告または更生などがあった場合、通常課される重加算税の額にさらに当該申告漏れに対する税額の10%相当の金額が加算される。

注意したいのは、タイムスタンプ要件について、2カ月を超えた場合もタイムスタンプを付与してスキャナ保存しなければならず、紙原本の保存だけでは要件を満たさない点だ。また、電子取引は必ず電子帳簿保存法の要件を満たした状態で電子保存しなければならず、要件を満たしていない請求書などの電子データは、税法上の保存書類と認められないため、青色申告や連結納税の承認の取り消し処分のリスクがある。しかし、これらの適用には2年間の猶予が設けられている。

同改正により、事前承認制度が廃止され、要件も大幅緩和された。「利用システムが要件を満たしているか?」「手順は適切であるか?」「改ざん防止の対策は十分か?」などの判断は各企業に委ねられ、不備が発覚した場合は、罰則により税務署が取り締まる。

電帳法に対応したシステムを使った業務フローでは、ペーパーレス運用で経理の完全テレワークが実現でき、紙の領収書を経理に提出する必要もなければ、申請や承認の進捗状況はいつでも確認できる。

「時代に逆行して対応を遅らせてしまうと、法律が余計な仕事を生み出しただけになってしまう。法律があるからと逃げの体制で業務を増やすくらいなら、電帳法改正に対応しているシステムを導入して業務環境を整理した方がいい」(篠原氏)