12月9、10日に開催された「TECH+EXPO 2021 Winter forデータ活用 データが裏づける変革の礎」では、特別講演にアルペン 戦略企画本部 情報システム部長の蒲山雅文氏が登壇。「内製化によるDXの実例~データ活用領域内製化の着想から実現までのリアルなプロセス」と題し、同社が推進する「内製化」に焦点を当てたIT活用・DXの取り組みについて紹介した。

内製化の本当の意義とは?

スポーツを軸とした小売業を中心に事業展開するアルペンは、現在グループで全国に約400店舗を構え、その取扱アイテム数は1000万を超える。その中にあって蒲山氏の率いる情報システム部は、元々、レガシーシステムやPOSシステムの管理を行う部署として、管理本部に属していたという。2019年頃、“事業変革を牽引するのはITである”という経営判断により、それまでの管理本部から戦略企画本部へと移行し、BIやCRMなどについての内製化推進に着手。現在はECやデジタルマーケティング、データ分析の組織なども情報システム部の管轄となり、ビジネスと密接に関わるかたちで活動している。

  • 情報システム部の遍歴と今後のロードマップ

「昨今はDXというトレンドワードが独り歩きしている印象があり、世に出てくる事例も“成し遂げた姿”に集中している感がある。では、自社はどう考え、どう進めばいいのか悩んでいる企業も多いのではないか」――蒲山氏はこう前置きした上で、アルペンはDXについてどのように考え、どのように実現しようとしているのかを、「内製化」をキーワードに掘り下げていった。

そもそもなぜ内製化を行うのだろうか。その大きな理由の一つは、会社として“カネと時間の問題”が劇的に改善されることだと蒲山氏は述べる。また、多くの人が抱く「システムはベンダーやIT部門といった専門家が作るもの」という認識を「システムは自分たちで作り、育てていくもの」という考え方に変えることで、経営者や事業部門が改善意識、主体者意識を持つようになる。これにより、皆でシステムをより良いものにしていこうという空気感が生まれ、会社全体としてアジャイル的な活動が可能になるわけだ。

「結果として、業務改革のスピード感のリミッターを外すことができます。この“思考の改革”こそがシステム内製化の最大の意義です」(蒲山氏)