東芝は、ハードディスクドライブ(HDD)のさらなる大容量化を実現する次世代磁気記録技術「共鳴型マイクロ波アシスト記録(MAS-MAMR)」を用いて、記録能力が改善することを実証したと12月27日に発表した。

同技術を用いることで同社は今後、30TBを超える大容量ニアラインHDDの早期の実用化を目指すとしている。

同社は、HDDの記録密度を向上するブレークスルー技術の1つとして「マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)」方式の開発を進めており、2021年にはスピントルク発振素子を利用したアシスト記録技術「磁束制御型マイクロ波アシスト記録(FC-MAMR TM)」採用した18TBのHDDを製品化している。

今後もHDDのさらなる大容量化が求められており、HDDの記録密度を上げるためには、記録メディアの磁性体粒子の微細化、熱的に安定する磁性体粒子の実現、十分な記録能力の実現、という3つの相反する特性を同時に実現する必要があり、これは「トリレンマの壁」と呼ばれていた。

このトリレンマの壁打破に向けた次世代大容量記録技術の研究開発が進んでおり、マイクロ波を利用してアシストするMAS-MAMRは記録密度の向上が期待されるものの、理論検討が先行し、MAS-MAMR効果の発現およびMAS-MAMRの記録能力改善が未実証であることが課題となってたという。

そこで同社は、2層のマイクロ波磁界発生層でマイクロ波を照射する「双発振型スピントルク発振素子」を新たに提唱し、同素子の開発を実施。

「双発振型スピントルク発振素子」により、より少ない電流で効率的にマイクロ波を発生させ、局所的に照射することが可能となり、同素子を記録ヘッドに組み込んで使用することで、MAS-MAMRによる記録能力の向上が実現するとしている。

MAS-MAMRの実証のため、東芝、昭和電工、TDKの3社の協力体制のもと、TDKは同素子搭載記録ヘッド、昭和電工は磁気記録メディアの新規開発をそれぞれ行い、東芝が同記録ヘッドに搭載された素子の安定的な発振を確認したとしている。

  • 発振スペクトル

    双発振型スピントルク発振素子(新開発スピントルク発振素子)の構成と発振スペクトル(出典:東芝)

その後、新たに開発した素子・記録ヘッド・メディアを組み合わせることで、MAS-MAMR効果の発現を確認し、MAS-MAMRの記録能力の改善(約6dB)を実証したとのことだ。

  • 共鳴型マイクロ波アシスト記録(MAS-MAMR)による記録能力改善

なお、同社では今回開発された新開発のスピントルク発振素子およびその発振特性を、2022年1月10日~14日に開催される国際会議(2022 Joint MMM-INTERMAG Conference)にて発表する予定だとしている。