北海道大学(北大)病院は12月17日、皮膚に貼るタイプの日本脳炎ワクチンの開発に成功したことを発表した。
同成果は、北大病院 皮膚科の岩田浩明講師らの研究チームによるもの。詳細は、臨床的に関わる微生物全般を扱う学術誌「The Lancet Microbe」に掲載された。
感染症予防に有効なワクチンの接種の一般的な方法としては注射があるが、針による血管が神経を傷つけるリスクがあったり、痛みを感じるといったこともある。
日本脳炎は、蚊によって運ばれるウイルスの感染によって起こる脳などの病気で、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣などの症状が起こり、致死率が高いことで知られる急性脳で、その感染予防にはワクチン接種が有効とされている。
すでに日本脳炎ワクチンは日本における定期接種ワクチンの1つとなっており、安全性と有効性が確認されている皮下注射型ワクチンで、幼少期に接種を開始、その後、概ね5年~10年ごとに1回接種することで、免疫を維持することが期待されている。
皮下注射は脂肪に注射をするが、皮膚の浅いところ(真皮)に注射をした方がワクチンとしての効果が高いことが知られている。そこで岩田講師らの研究チームは今回、マイクロニードル型の貼るタイプの日本脳炎ワクチンを開発。真皮に接種を行うことで、有効性と安全性の評価を実施を行うことにしたという。
実は北海道は、2016年3月まで日本脳炎ワクチンの定期接種非対象地域であったため、日本脳炎の抗体を保有しない成人がまだ多いという。そこで北大病院において、日本脳炎ワクチン未接種の成人男女に対し、従来の注射型ワクチン(ワクチン量100%)と、今回開発されたマイクロニードル型ワクチン(ワクチン量25%と10%)の2回接種(初回と3週間後)を実施。接種後半年までの抗体価と副反応についての調査が行われた。
今回開発されたマイクロニードル型ワクチンは、文字通り長さ1mm未満の極小の突起がシート上に多数配置されたパッチ型製剤で、体内で速やかにマイクロニードルごと溶解するタイプであるため、使用後に誤って刺さる医療事故が起きないという長所も有しているという。
対象者は、20~34歳までの39名(男性24名、女性15名)で、ワクチン量25%のマイクロニードル型ワクチンは、全員が1回の接種で抗体価がピークに達することが確認された。また、ワクチン量10%のマイクロニードル型ワクチンと注射型ワクチンは、2回の接種で抗体価がピークとなり、マイクロニードル型ワクチンはワクチンの投与量と抗体価が比例していることが判明したという。
また、マイクロニードル型ワクチンを用いた場合、全員が接種部位に紅斑が出ることも確認されたが、これは免疫反応が良好に起きている証拠と考えられるという。この紅斑はすべての被験者で自然に治癒し、そのほかに大きな副反応は生じなかったとしている。
今回の成果を踏まえ研究チームでは、マイクロニードルワクチンを用いることで接種回数を減らせたり、接種人数を増やせたりすることが期待できるとしているほか、同様のマイクロニードルを用いてインフルエンザなど、ほかのワクチンに応用することも期待されるとする。また、誤って針を刺してしまう事故が防げることから、医師の確保が困難な開発途上国における、安全なさまざまなワクチン接種につながることも期待されるとしている。