九州大学(九大)と福岡歯科大学(FDC)は10月29日、妊娠中の母体の高カロリー食摂取が次世代(子供)の肥満や生活習慣病の原因になるメカニズムを明らかにしたと発表した。
同成果は、九大大学院 歯学研究院 OBT研究センターの安河内友世准教授、FDC 口腔医学研究センターの平田雅人客員教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、分子代謝を扱う学術誌「Molecular Metabolism」にオンライン掲載された。
これまで、肥満や生活習慣病といった病気の原因は、主に遺伝や出生後の環境にあると考えられてきた。今回、研究チームでは、マウスを用いて、その他の要因の有無、特に出生前(妊娠母体)の環境因子がそうした病気の発症と関係があるのかどうかを調べることにしたという。
通常、空腹時には肝臓のグリコーゲンが分解され、それが枯渇すると、脂肪が分解されてエネルギー源となることが知られている。しかし、妊娠中に高カロリー食を摂取していた母親の産仔では、グリコーゲン分解が起こりにくくなることが判明。結果として脂肪が分解されにくくなり、体脂肪が蓄積され、肥満やインスリン抵抗性を呈するようになることが確認されたという。
また、その原因についても、仔の肝臓で「グリコーゲンホスホリラーゼ」(Pygl)遺伝子に異常なDNAメチル化が生じ、その発現を低下させていることであることも判明。さらに、妊娠母体が経口摂取するタンパク質「オステオカルシン」が、Pyglの発現を増強させることで、産仔の肝臓のグリコーゲン代謝や肥満の改善作用を持つことも確認したとする。
研究チームによると、今回の研究はマウスで確認されたものであるが、人でも同様のことが起きている可能性が高いと思われるため、妊娠期あるいは授乳期の栄養管理の重要性を医療関係者のみならず、多くの人に知ってもらえればとしている。