東北大学は8月20日、全国の都道府県が公表した20歳未満の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の情報を用いて過去に遡った解析(後方視的解析)を実施した結果、0~19歳の小児患者が家庭外で二次感染を起こす頻度は低いこと、また二次感染を起こす小児患者の割合は中学生・高校生など、比較的年齢が高い集団で高いことを確認したと発表した。
同成果は、東北大大学院 医学系研究科 微生物学分野の押谷仁教授らの研究チームによるもの。詳細は、小児から十代の思春期までの子どもたちが対象の医学や心理学など幅広い分野を扱う学術誌「Frontiers in Pediatrics」にオンライン掲載された。
インフルエンザでは、小児が地域の感染拡大を広げる役割を果たすことが、これまでの研究から明らかになっているため、学級閉鎖や休校措置による感染拡大の阻止をはかるといった措置が取られることもある。しかし、新型コロナについては、まだまださまざまな点でわかっていないことが多く、罹患した小児が、地域の感染拡大において果たす役割も、そうしたよくわかっていないことの1つとなっている。
小児の新型コロナ罹患者に関しては、軽症者や無症候感染者が多く、重症化する頻度は成人よりも低いとされていることから、そうした小児を対象とした感染予防対策の有効性について、その正確な評価はこれまで困難だったという。
インフルエンザ同様に地域内流行の原因の1つとなっているとする意見もあれば、小児が感染拡大に果たす役割は限定的であるとする意見の両方があり、結論には至っていない。そのため、地域の流行を制御するという目的での小児を対象とした対策はこれまでのところ難しい状況となっている。
そこで研究チームは今回、各都道府県が公表した20歳未満の新型コロナ患者情報を用いて、過去に遡る後方視的解析を実施したという。具体的には、各都道府県から2020年10月末までに報告された小児患者7000人余りに対し、過去に新型コロナ患者と接触した環境、および自身が二次感染を起こした環境についての調査を実施。
その結果、過去に家庭内でほかの患者と接触した小児が32%と最多であったが、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校で感染者と接触した小児患者は5%未満だったことが判明したという。
そして二次感染を起こした点については、全小児患者のうち10%が起こしていることが確認された。学校別に見ると、中学生以上に年齢が進むにつれて、二次感染を起こす患者の割合が上昇。中学生・高校生においては、小学生に対してそれぞれ2.7倍、2.1倍であったという。
また二次感染症例が発生した環境に関しては、家庭内が26%と最多で、保育園・幼稚園・学校などで発生した二次感染症例は全二次感染症例の6%にとどまっていたことも判明したという。
今回の研究からは、保育園・幼稚園・学校などの家庭外での感染拡大への関与は限定的であることが示されたほか、二次感染を起こす割合は小学生よりも中学生や高校生が高く、比較的年齢の低い学童の寄与が大きいインフルエンザとは異なり、小児の地域内流行に果たす役割は限定的である可能性が示唆されたと研究チームでは説明している。
なお、研究チームでは、今回の成果を踏まえることで、感染予防対策の評価や、対策の立案につながることが期待されるとしている。