自治医科大学(自治医大)は7月30日、これまで明らかになっていなかった、注意欠如多動症(ADHD)に対する「α2A選択的作動薬(グアンファシン塩酸塩:GXR)」の薬効反応を検出したと発表した。
同成果は、自治医科大学小児科学の池田尚広講師、同・門田行史准教授らを中心とした、国際医療福祉大学、中央大学、日立製作所の研究者や技術者が参加した共同研究チームによるもの。詳細は、「Frontiers in Neuroergonomics」に掲載された。
メチルフェニデートやアトモキセチンなどのADHD治療である「モノアミン再取り込み阻害薬」は、脳の「前頭前野」を介した脳内モノアミンネットワークを賦活し、ADHD症状を軽減するとされており、これらはすでにfMRIをはじめとする脳機能研究により、前頭前野における薬効反応が検出済みだという。
しかし、同じくADHDの治療薬として認可されている「α2A選択的作動薬(グアンファシン塩酸塩:GXR)」のADHDに対する作用機序や脳における薬効反応はよくわかっておらず、その解明が求められていた。
研究チームは、これまで光トポグラフィ(fNIRS)を用いて、モノアミン再取り込み阻害薬の右前頭前野における頑健な薬効反応を検出するシステムを開発してきており、今回の研究では、同システムを用いて、GXRの薬効反応の検討を実施したという。
具体的には、実薬もしくはプラシボ内服3時間前後における脳機能計測を実施。その結果、前頭前野に有意な変化はなかったものの、「右角回」に有意な「酸素化ヘモグロビン濃度」(oxy-Hb)の増加が示されたという。
この結果を踏まえ、研究チームでは、GXRの脳機能学的薬理効果は、従来のADHD治療薬とは異なる作用機序を有すると推測されるに至ったとしている。賦活化した右角回は注意機能ネットワークの1つであり、GXRの作用メカニズムは右角回を中心とした脳内ネットワークの賦活に関与する可能性が示唆されたとしている。