千葉県流山市は6月30日、東京理科大学、内田洋行およびソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)の協力のもと、SIEのプログラミング教材「toio(トイオ)」を活用した、小学校から中学校まで一貫したプログラミング教育を7月より4校の公立小・中学校で開始すると発表した。
toioは「toio コンソール」と、モーター内蔵で動き回ることのできる「toio コア キューブ」が2台。そして、それぞれのキューブの動きを制御する2台のコントローラー「toio リング」により構成。別売りのtoio専用タイトル(以降タイトル)に付属するあそび プログラムが格納された「toio カートリッジ」と専用のマットを組み合わせて使用する。
同市は昨年度、東京理科大の滝本宗宏教授をICT教育推進顧問として迎え、「流山市 GIGA スクール構想」を策定。その一環として、プログラミング教育を行うにあたり、同教授からから「産官学が連携したプログラミング教育の実践」の提案があったことから、今回の産官学連携が開始された。
今年度は、小学校1校、中学校3校のモデル校の導入となるが、来年度からは、市内の全小中学校で9年間一貫のプログラミング教育がスタートする。
流山市教育長 田中弘美氏は、「今後はモデル校の実践結果を踏まえ、流山市のプログラミング教育の方向性を図っていきたい」と語った。
今回の取組は、教育が分断されがちな小学校と中学校で連携し、9年の一環教育を行うのが特徴。小学校の低学年では、PCやタブレットを利用しないアンプラグドプログラミングを行い、小学校の高学年では命令のアイコンを組み合わせていくScratchでプログラミング。中学校では、JavaScriptのコードを直接コーディングすることも行い、徐々にステップアップしていく。
流山市市長 井崎義治氏は、今回の取り組みを開始することについて、「人口が増加している本市において、最重要課題の1つが教育の質の充実だ。本日発表する先進的統合型プログラミング教育は、情報化社会において、子供が自分自身で問題に取り組み解決していく力の学びに対して、好奇心をもつ力を発展的に伸ばすことができることを目指している。このような特色ある教育を受けた児童・生徒が、次の日本のイノベーションを起こすことを願っている」と挨拶した。
昨年の3月に同市および野田市と包括連携協定を結んだ東京理科大学の副学長 井手本康氏は、今後、高齢者の健康や地域の防災力をテーマに講演会を実施するほか、東京理科大学の施設の見学会を実施する予定であることを明らかにした。
そして同氏は、「理工学部では、横断型コースを設け、専門分野を横断するような研究を進めてきた。次のステップでは、その研究を実社会に反映するように、産官学が連携して行っていくことをやっていきたい。今回の取組はこれを実現するすばらしい取組だと思っている。今後もこういう取組をバックアップしながら、産官学連携を実のあるものにしていきたい」と述べた。
今回の取組では、流山市が全体の統括や学校との調整、東京理科大学は、カリキュラム案の作成、授業コンテンツの作成、授業支援を担当。
内田洋行は、カリキュラム案の共同開発や授業案の監修、オリジナルパッケージの開発を行い、SIEは機材の提供と技術サポートを行う。
今回の取組を中心となって実施する滝本教授は、「東京理科大学では、今回の協定において、教員だけではなく、学生も派遣し一緒に授業をやっていく。これによって、児童・生徒からすれば、自分たちの年齢に近い人が教えてくれるので、質問もしやすくなる。先生にとっても学生がサポート役になって授業を進めていける。学生にとっても、教育の学びの実践も行える。また、現場の先生の労を増やさないために、教育用コンテンツを動画として提供していきたい。必要であれば、先生に大学にきていただいて研修を受けたり、アイデアを出し合ったりすることもやっていくことを考えている。そして、今回の取組が全国のICT教育のロールモデルになることを目指している」と語った。
また、協力支援を行う内田洋行の代表取締役社長 大久保昇氏は「内田洋行は、75年前に計算尺を数学の教材として提供することで教育市場に参入し、現在では売上の3割程度を教育関係が占めている。今後、大変な時代を迎えるにあたって、いかにイノベーションを起こせる人材を育成していくかが重要だ。われわれが、その一助となって貢献できればと思っている」と語った
そして、同じく協力支援を行うソニー・インタラクティブエンタテインメントの代表取締役副社長 伊藤雅康氏は、「デジタル化が進んでいくなかで、これまでの価値観にとらわれず、自分で考え、問題を解決して、夢を実現することにわれわれの『toio』が少しでもお役に立てればと思っている」と述べた。