東芝ならびに東芝デバイス&ストレージは6月17日、東芝デバイス&ストレージ子会社の東芝マテリアルが販売を行っている酸化タングステンを用いた光触媒「ルネキャット」の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性試験の結果、一定の感染力抑制の効果を持つことを確認したと発表した。
検証試験の結果を含めた研究成果は、日本防菌防黴学会の季刊誌「Biocontrol Science 2021 Volume 26 Issue2 (p.119~125)」に掲載されたという。
今回の研究は、30mm×30mmのガラス板にルネキャットを4g/m2塗布した試験サンプルを使用し、照度3000luxで6時間蛍光灯(UVはフィルターでカット)を照射した試験サンプルを比較サンプルとTCID50法により評価。その結果、光照射前のウイルス感染価(対数値)は5.93であり、光照射後であっても、比較サンプル(バインダーのみ)のウイルス感染価(対数値)は5.18と大きな変化を示さなかった一方、ルネキャットを塗布したサンプルのウイルス感染価(対数値)は光照射後には3.05となり、99.2%以上低下していることが確認されたという。
また、電子顕微鏡写真観察や免疫ブロット分析から、ルネキャットはウイルスのスパイクたんぱく質を減少させていることが判明、その結果としてウイルスの感染力を抑制する効果があることが示唆されたとしている。
なお、光触媒は、光が当たると表面に電子と正孔が形成され、酸化作用を利用することで臭いや細菌などといった有害物質の分解を行うことを可能とするもので、一般的な光触媒の材料としては「酸化チタン」が知られているが、酸化チタンはバンドギャップが3eV以上であり、機能を発現するためには紫外線の照射が必要である一方、ルネキャットのベースとなっている酸化タングステンは、可視光や蛍光灯照明条件でもさまざまな揮発性有機化合物(VOC)を酸化分解するだけの活性を有しているため、屋内照明下でも触媒反応を起こすことが可能だという。