東北大学の研究チームが、日本人の未成年者(5~18歳)200名以上を対象に、脳の構造的発達、心理テストの成績、家族の社会経済的地位の関係を3年間にわたって追跡調査したところ、社会経済的地位の高い家族の未成年者は、社会経済的地位の低い家族の未成年者に比べて、全検査IQと言語性検査IQのスコアがわずかだが有意に高かったこと、ならびに言語性検査IQ以外の個々のIQスコアと社会経済的地位との相関関係は認められなかったとの結果が得られたという。

同研究は、東北大学 加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門の竹内光 准教授、同 川島隆太 教授、同研究所 瀧靖之 教授らによるもの。詳細は、オープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

これまでの研究から、未成年者の家族の社会経済的地位(世帯収入と両親の就学年数で測定)が、認知能力と脳の発達の各種指標と関連付けられることが報告されていたが、これらの関連性が、数多くの生物学的要因と環境的要因の結果である可能性が高いものの、その相関性が発達過程でどのように変化するのかはよくわかっていなかったという。

そこで研究チームは今回、未成年者200名以上(平均年齢11.2歳±3.1歳)を対象に、脳の構造的発達、心理テストの成績、家族の社会経済的地位の関係について、3年間にわたる追跡調査を実施。その結果、社会経済的地位の高い家族の未成年者は、社会経済的地位の低い家族の未成年者に比べて、全検査IQと言語性検査IQのスコアがわずかだが有意に高いことが示されたとする一方、言語性検査IQ以外の個々のIQスコアと社会経済的地位との相関関係は認められないことが示されたとする。

なお、研究チームは、家族の社会経済的地位と文字の認知と読解に関与する脳領域の構造の経時変化との相関について、今回の観察結果から直接の因果関係が存在すると判断できないが、時間の経過にしたがって相関が強くなることが明らかになったとしており、どのような教育的介入も、幼少期の方が効果的であると考えられることが示唆されたとしている。