京都府立医科大学(京都府立医大)は4月28日、日本人の高齢2型糖尿病患者における摂取エネルギー量が、筋肉量変化に与える影響を明らかにしたと発表した。

同成果は、京都府立医科大 大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学の河野礼奈大学院生、同・高橋芙由子大学院生、同・橋本善隆病院助教、同・福井道明教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、科学雑誌「Clinical Nutrition」に掲載された。

日本では高齢者の2型糖尿病の患者数は増加傾向にあり、近年の研究から高齢2型糖尿病患者と健常者を比較すると、加齢に伴って筋量および筋力が低下した状態である「サルコペニア」の有病率が高いことが報告されており、サルコペニアの予防・改善が課題とされるようになっている。

骨格筋量は、高齢者においては年間に0.5~2%ほど低下するといわれており、その骨格筋量を維持するためには、運動やタンパク質の摂取などが重要であるほか、摂取エネルギー量も重要な要素となるとされている。研究チームによるこれまでの研究からも、サルコペニア合併高齢2型糖尿病患者は、そうではない人と比較して摂取エネルギー量が少ないことが報告されていたが、実際に2型糖尿病における摂取エネルギー量が骨格筋量の変化に与える影響については、よくわかっていなかったという。

そこで今回、研究チームが実施中のコホート研究「KAMOGAWADMコホート」のデータを用いて、摂取エネルギー量と骨格筋量の変化についての前向き観察研究を実施(データの内訳は、非高齢者2型糖尿病患者93名、高齢2型糖尿病患者197名)。調査の結果、非高齢者では平均16.3か月のフォローアップで54.8%に筋量低下を、高齢者では平均18.1か月のフォローで58.9%に筋量低下が認められたという。非高齢者、高齢者に関わらず、筋量低下群では非低下群と比較すると摂取エネルギー量が少ないという結果が認められたとする。

さらに高齢者においては、年齢、性別、BMI、SMI、罹病期間、ヘモグロビンA1c(HbA1c:全ヘモグロビン中の糖化ヘモグロビンの割合)、喫煙習慣、運動習慣、アルコール摂取習慣、インスリン使用、SGLT2阻害薬(糖を尿として排泄する薬)使用、GLP1受容体作動薬(体内の血糖値を下げるホルモンGLP1を補う薬)使用、ステロイド使用、腎不全、タンパク質摂取など、さまざまな筋量低下に関連する因子で調整。その上で摂取エネルギーが少ないことが、筋量低下に関連することを明らかとしたという(理想体重当たりのエネルギー摂取量における1kcal増加当たりの調整オッズ比0.94[95%信頼区間0.88-0.996])。筋量低下群の定義を、1.2%および2%の年間筋量低下率とした場合でも、同様の結果が認められたとした。

さらに、高齢2型糖尿病患者においてはインスリン治療を受けている群、血糖コントロール不良(HbA1c7%以上)群、運動習慣を有する群、喫煙習慣を有する群、肥満を有する(BMI25以上)群で、摂取エネルギー量が少ないことと筋量低下に関連があることが明らかとなったとした。

なお、研究チームでは、糖尿病患者においては、必要以上にエネルギーを摂取してしまうことを避ける必要があるが、高齢2型糖尿病患者においては、サルコペニアの予防の観点から筋量維持のために適切なエネルギーをしっかりと摂取することも重要だと指摘しており、その点を医療従事者が意識して治療を行うことに加え、今回の研究成果が患者も過度にエネルギーを制限しないようにするきっかけになることが望ましいとしている。

  • サルコペニア

    摂取エネルギー量と筋肉量低下を示すグラフ。左が65歳未満で、右が65歳以上 (出所:京都府立医科大プレスリリースPDF)