関西医科大学(関西医大)は4月5日、鶏卵アレルギーを持つ小児患者と、同年代の健康な小児の腸内細菌叢を比較し、前者ではその多様性が低下していること、そこに占める「酪酸産生菌」の割合が有意に低下していることを発見したと発表した。

同成果は、関西医大 小児科学講座の山岸満医師、同・赤川翔平 講師らの研究チームによるもの。詳細は、欧州科学誌「Allergy」に掲載された。

厚生労働省の発表によると、花粉症や喘息、食物アレルギーなどのアレルギー疾患は日本人の2人に1人が罹患しているとされ、アレルギー疾患はもはや国民病とさえいえる状況だ。アレルギーは、スギ花粉や卵白など、特定の抗原に対して免疫が過剰に反応することによって起きるが、その発生メカニズムは複雑であり、まだ未解明な部分も多い。そのため、根本的な治療法が開発されるに至っていないのが現状だ。

そうした中、免疫と腸内細菌叢の関係が明らかになってきている。酢酸やプロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」をはじめとする腸内細菌の産生物が、宿主の免疫にも影響を与えるというのだ。短鎖脂肪酸には健康によいさまざまな働きをすることが明らかとなってきている。たとえば、リンパ球の一種であり、過剰な免疫応答を抑制する役割を有する「制御性T細胞」の分化誘導などを介して、免疫寛容に重要な役割を担っているという。

このような背景を受けて研究チームは今回、腸内細菌叢の乱れがアレルギー疾患の発症に関与している可能性に注目。下記の小児患者の便が遺伝子解析にかけられ、腸内細菌叢の多様性、構成菌目、酪酸産生菌の割合の検証が実施された。

  • 小児鶏卵アレルギー(EA)患者群 18例(EA群:男児13例、年齢中央値3.1歳[四分位範囲1.5-5.5])
  • 健康小児(HC)群 22例(HC群:男児12例、年齢中央値4.0歳[四分位範囲2.9-6.1])

まずEA/HCの両群において、年齢・性別による差は確認されなかったとした。また腸内細菌叢の多様性においては、EA群において有意に低いことが確認されたという。さらに、酪酸産生菌割合はEA群において有意に低いことも明らかとなった(2.3% [1.0-5.2] vs. 6.9% [2.5-9.6], p=0.013)。

構成菌目については、EA群において、グラム陰性菌の「エンテロバクター目」の割合が高く(17.0%[9.5-22.3]vs.1.8%[0.9-10.9],p=0.029)、グラム陽性菌の「ラクトバシラス目」の割合が低い(7.1%[3.6-10.1] vs.11.5%[7.5-18.5],p=0.012)という結果となった。

なお、今回の研究により、鶏卵アレルギーを有する小児患者の腸内では、健康小児と比較して酪酸産生菌が減少していることが明らかになったことから、腸内細菌叢をより良い状態に改善させることが、食物アレルギーの新しい予防法・治療法の開発につながるものと期待されると研究チームでは説明している。

  • 腸内細菌層

    腸内細菌層に占める酪酸産生菌の割合(%) (出所:関西医大プレスリリースPDF)