凸版印刷とTISは3月19日、ローカル5G(第5世代移動通信システム)での相互接続を目指して技術連携を開始すると発表した。両社はローカル5G環境を接続し、拠点間でのローカル5Gの実証実験環境を2021年度中に構築する予定。またローカル5Gの普及と社会実装に向け、それぞれがこれまでに培ってきた技術や知見を融合し、ローカル5Gを使用する新たなビジネス創出を目指す。
局所的な無線ネットワークとして現在広く使われているWi-Fiでは、カバーできる範囲の狭さや、電波干渉による大容量データ通信の遅延やセキュリティ性などが課題になっているという。また、生産現場の自動制御、建設現場での建設機械の遠隔制御、大規模農場の自動管理や自治体が管理する河川の遠隔監視などの実現には、災害発生や大規模イベント開催などの影響による通信トラブルの無い独立したネットワークが求められているとのこと。
両社はこれらの課題に対して、相互の技術検証を目的としたローカル5Gの検証拠点を整備し相互接続することで、超高速・大容量・低遅延・多接続といった5Gの強みを生かした実証実験を実施し、企業・自治体における5G及びローカル5Gの多様な利用環境での有効性を検証していく。
また、高解像度映像の相互リアルタイム配信、360度映像などのリアルタイム転送による新しいVR(仮想現実)体験や機器の遠隔操作など、新たなビジネス展開も検討する。さらに、スマートシティの実現に向けた、「IoA仮想テレポーテーション」技術を用いた都市と地方間での遠隔購買体験などについても実証を進めていく方針。
連携の具体的な内容として両社は、ローカル5G基地局の設置及び、相互の技術検証の2点を挙げる。
ローカル5G基地局の設置に関しては、超高速・大容量・低遅延・多接続といった5Gのメリットが発揮できるスタンドアロン方式のローカル5G基地局を両社の拠点に設置する。周波数帯としては、2020年12月の総務省による制度整備によって新たに拡張されたSub6帯を扱う予定だ。
相互の技術検証については、5Gコア設備やアンテナなどで構成するローカル5G基地局を設置し、検証用端末などのローカル5G検証環境を整備し、ローカル5Gを使用したデータ通信に関する技術検証を相互で行う。多様な技術を利活用できる拠点を立ち上げることで、新たな社会課題の解決に繋がるサービスやソリューションの創出に繋げるとしている。
各社の役割としては、凸版印刷はバーチャルオンラインツアーや4K高精細映像のデジタルアーカイブなど多様なデジタルビジネスの知見を生かして、相互接続を目指したローカル5G基地局を設置してデータの送受信の技術検証を行う環境を整備し、ローカル5Gの実証実験を開始する。
TISは、5Gを使用する新サービスや新技術の実証・検証が可能なローカル5G基地局を設置したラボを、東京都江東区の豊洲オフィスに開設する予定。同ラボでは、ローカル5GやWi-Fi 6といったワイヤレス技術やAI(人工知能)・XR・IoTなどの最新技術を使用する、新規事業・ビジネス、新技術の研究開発及び検証を行っていく方針だ。