国立成育医療研究センター(NCCHD)は2月3日、6歳時の鶏卵アレルギー(食物経口負荷試験で判定)に鶏卵を長期にわたって一切食べさせないこと(完全除去)が影響するかを調査し、完全除去を継続していた子どもで鶏卵アレルギーが改善したのは8%にとどまること、ならびに部分解除や経口免疫療法により、完全除去せずに少しずつ食べさせた方が鶏卵アレルギーの予後がいいことなどを発表した。
同成果は、NCCHD アレルギーセンターの大矢幸弘センター長、同・山本貴和子医長(エコチル調査研究部 チームリーダー併任)、同・宮城俊雅医師(現・沖縄県 中頭病院所属、論文筆頭著者)らの研究調査チームによるもの。詳細は、小児科学の 国際英文雑誌「F rontiers in Pediatrics」に掲載された。
これまでのNCCHDアレルギーセンターによる全国調査から、3歳までの子どもでは鶏卵アレルギーが食物アレルギーの原因として最も多いことが明らかになっている。
また海外の調査報告によると、卵白に特異的なIgE抗体のピークが50kU/L以上の子どもは、8歳時に鶏卵アレルギーが改善していたのは11%のみだったという。鶏卵アレルギーを持つ子どもが、すべて年齢とともに改善するわけではないということがわかってきたのである。
それらに加え、鶏卵アレルギー検査が陽性という理由から、鶏卵摂取を一切食べないでいる子どもが57%もいたことも報告されている。鶏卵を長期間にわたって長期に完全除去すると、その後に、鶏卵アレルギーの寛解(アレルギーがよくなること)にかえって影響が出る可能性が考慮され、今回の調査に至ったのだという。
今回の調査期間は2013年11月から2019年7月までで、NCCHDアレルギーセンターにおいて食物経口負荷試験(OFC)が実施された際の6歳の子どものうち、2歳までにアレルギー検査のデータがある子(他病院のデータも含めて)の電子カルテデータを用いて過去に遡って情報収集が行われ、後方視的な調査が実施された。OFCの結果から、加熱鶏卵アレルギーがよくなっている17名の子どもと、OFCで少量の鶏卵に反応した鶏卵アレルギーが持続している26名の子どもが調査対象とされた。
その結果明らかとなったことは、海外の報告にもあったとおり、完全除去の状態のまま子どもの成長を待っていても、自然にすべての子どもの鶏卵アレルギーがよくなるわけではないということだった。今回の調査では、6歳で完全除去を継続していた子どもは13名いたが、そのうちで鶏卵アレルギーがよくなっている子どもは1名のみだったという。今回の結果だけを見れば、成長とともによくなる子どもの方が少ないということになる。
逆に完全除去していない30名のうち、鶏卵アレルギーがよくなったのは16名。明らかに完全除去しない方がアレルギーがよくなる結果となったという。
それから、2歳までのオボムコイド卵白中の耐熱性が高い蛋白IgE抗体価で調整しても、6歳までの長期間の鶏卵完全除去を行ってしまうと、鶏卵アレルギーが持続するリスクは14.5倍と有意に上昇することも明らかとなった。なおオボムコイドとは、卵白に含まれる鶏卵アレルギーの主要なアレルゲンとなるタンパク質の1つである。
今回の調査結果からも、検査結果が陽性だったからといって、それだけを理由にして完全除去するのは推奨されないという。完全除去はせず、部分解除や経口免疫療法を行うようにした方が、鶏卵アレルギーの予後がいいとしている。
ただし少しずつ食べさせた方がいいとはいっても、保護者の自己判断で適当な量の鶏卵を子どもに食べさせることは、アナフィラキシーなどが生じるリスクが高くなるためやってはいけない。アレルギーの専門医の適切な指示の下で必要最小限の除去を行うようにして、きちんとした部分解除や経口免疫療法で少しずつ摂取して、子どもの体に慣れさせていくことが望ましいとする。保護者の自己判断で自宅で食べさせることは、最悪の場合は生命にもかかわることもあり得るほど危険なので、厳重に注意する必要がある。