コロナ禍で顕在化した課題の対応を迫られる中小店舗

日本中に多数存在する中小店舗・個店の経営者にとって、長年抱えてきた課題はいくつもある。そこに新たに、大きな課題としてのしかかったのがコロナ禍およびニューノーマルへの対応だ。

「人手不足は大規模な企業でも大きな課題ですが、中小店舗にとっては経営に直結する課題になります。例えば、アルバイトが確保できない日は席数を減らして営業するとなれば、即座に売上が減るわけです。財政的な余力がないため、小さな問題も影響が大きくなってしまうというのが中小店舗の特徴です」と語るのは、リクルート SaaS領域プロダクトマネジメント室 Airプロダクトマネジメントユニット ユニット長 「Airビジネスツールズ」統括プロデューサー 林裕大氏だ。

  • リクルート SaaS領域プロダクトマネジメント室 Airプロダクトマネジメントユニット ユニット長 「Airビジネスツールズ」統括プロデューサー 林裕大氏

林氏は、「Airレジ」や「Airペイ」をはじめとする、中小店舗の経営をサポートするツールを提供してきた立場として、経営者からのヒアリングで得ている情報も多い。その中で強く感じているのが、「経営者は起業に際して思い描いていた理想に向かって動けなくなっている」ことだという。

「中小企業のオーナーの毎日は、私達の想像以上に、煩雑な業務にあふれています。例えば、お店のオーナーは、“店長兼スタッフ兼経理” と一人何役もの業務をこなしていたり、リソースの不足を超長時間労働で補っていたりします。また、お店を開業する前に経営者が考えていた、メニュー開発や人材育成などの“本当にやりたかったこと”も、いざお店が開業してしまうとレジ締めや人員の調整など“やらざるを得ないこと”に時間を奪われてできなくなってしまっているという話もよくうかがいます」と林氏は語る。

こうしたことが起きている背景には、「資金がなくてよい人材が確保できない」「人を定着させるのが難しい」「信頼関係を築くのが難しい」「業務がアナログで他人に任せられる状態になっていない」など、さまざまなことがある。そうした中、人に任せられないなら自分が頑張って何とかするという形で長く対応してきたわけだ。

しかし、コロナ禍でそれも難しくなってきている。外出を自粛する人が増えた結果、実店舗の売上は下がった。経営状況がますます厳しくなってきている中、従業員を雇い続けるための資金を確保する新しい取り組みや感染症対策を考えるなど、やらねばならないことも増えている。そして、それを経営者自身が一人で対応しなければならなくなっているのが現状だ。

「この状況をどう乗り切るのか。例えば、テイクアウトに対応するにはどうしたらいいのかなど、きちんと考えるための時間や資金をどうやって確保するのか。こうしたことが重要度の高い課題として上がってきたのが、ここ半年1年の状況です」と林氏は語った。

感染症の予防と経営者の負担軽減に「Airペイ」と「Airレジ」

現在、店舗経営者が最も気をつかっているのは感染症の予防対策だ。仮に経営者自身や従業員が感染してしまった場合、店舗を閉めなければならない。事業を継続するために神経質にならざるを得ないポイントだ。この感染防止の需要にAir ビジネスツールズは、キャッシュレスをはじめとした業務支援ソリューションで対応している。

「キャッシュレスは昨年、急速に普及しましたが、今年になっても需要が落ちることはなく需要は継続しています。これは金銭のやり取りからの感染を避ける手段として、キャッシュレスが注目されているからでしょう。人と人の接触を避けたいという意識は高く、キャッシュレスへの意欲を感じます」と林氏。

導入が容易で、多彩な決済手段に対応できる「Airペイ」とPOSレジ「Airレジ」は、最近、これまで導入に至らなかった店舗において採用が増えているという。

「以前はレジに経営者が張り付いていられましたが、コロナ禍で店舗にずっとはいられない状況になっています。とはいえ、通常のレジは現金の流れが見えないので、アルバイトに任せづらい。しかし、AirペイとAirレジの組み合わせならデジタルで記録が残るので、安心してレジ仕事を任せられ、経営者は他の仕事ができるわけです。アナログでもできるならそのままでいいと思っていた方々が、コロナ禍によってコストや人的リソースをつくり出さなければいけなくなり、動き出している印象です」と、林氏は話す。

3密や混雑の回避に「Airウェイト」と「Airリザーブ」が活躍

店舗の混雑回避のために同時入店人数を絞ったり、予約制に切り替えたりする店も増えている。この需要にも、店舗内外の混雑への対応としてデジタルで行列管理をする「Airウェイト」と、サイトへの簡易な予約機能追加を実現する「Airリザーブ」で対応できる。

AirウェイトはWeb上で受付番号を配布し、呼び出しを行って入店させるという流れを実現できる。店舗内での十分な距離確保のために入店人数を絞っている場合などにも、店外に行列を作って過密状況を作ることなくスムーズな順番待ちが可能だ。

これまでは店舗の武器でもあった「行列」だが、今では「密状態を作り出していると見られかねない。しかし、デジタルで予約を管理すれば物理的な行列は作らず、密を解消できる。

  • 「Airウェイト」では、予約時間が近づくと、スマートフォンで呼び出せる

  • 病院の順番待ちも、受付で整理券を受け取れば自宅などで待機することができる(オンラインで受付も可能)

予約サービスも、従業員数を絞って営業する中で電話の対応をする余裕はない状況で役立つし、突然大人数の来店があって対応できない状況も回避できる。「Airリザーブ」はこれまであまり導入されていなかった学習塾や住宅見学でも導入が進んでいるそうだ。

「コロナ禍がデジタル活用の一歩を踏み出すきっかけになっているとは思います。今はカスタマーマインドも変わっています。『現金の手渡しが嫌だ』『混み合っている店や行列は密だから避けたい』と思う人も増えているのです。そうしたカスタマーの行動や心境変化に対応しなければならないので、おのずとデジタルへの一歩を踏み出すことになっているようです」と林氏は、デジタル対応が遅れていた中小店舗が動き出すきっかけが生まれている状況を語った。