横浜市立大学(横浜市大)は11月27日、喫煙と排尿障害に関する大規模な臨床研究を行い、喫煙が日本人における排尿症状が悪化する要因であることを明らかにしたと発表した。
同成果は、横浜市大附属 市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科の河原崇司診療講師、同・上村博司診療教授、横須賀共済病院 泌尿器科の伊藤悠城医師の共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
過活動膀胱は、日本人の40歳以上の男女8人に1人が罹患するとされる尿意切迫感と頻尿を主症状とする疾患だ。加齢をはじめ、さまざまな因子で罹患率が上昇することが報告されており、そのリスクの中に喫煙も含まれている。ただし、喫煙と排尿症状の関連を示す大規模な研究はこれまで行われてこなかった。
そうした中で今回の研究は、世界でも初めてとなる喫煙と排尿障害を調べる大規模な調査であると同時に、2004年以降行われてこなかった日本人成人男性の排尿症状についても調査する大規模な臨床研究として行われた。
今回の研究では、日本人男性1万人に対して喫煙および排尿障害に関するインターネットを用いたアンケートが実施され、最終的に9042人からの回答を得られたとした。インターネットの調査会社であるアイブリッジが依頼を受け、今回のアンケートを担当した。
アンケートの結果、過活動膀胱・尿意切迫感・夜間頻尿のいずれも、各年齢群で「Non-smoking(喫煙習慣がない)群」(NS群)と比較して、「Ex-smoking(喫煙習慣があるが、禁煙中)群」(ES群)と「Current-smoking(喫煙習慣のある)群」(CS群)は、高い罹患率を示していることが明らかとなった。その内訳は、NS群が3545名、ES群が3060名、CS群が2437名だった。
中でも、20代や30代などの若年者においても、喫煙による排尿症状に与える影響が顕著であることが明らかとなったという。高齢・糖尿病・高血圧など、若年者はほかの因子が少ない分、喫煙の影響が強く出たと考えられるとしている。
共同研究チームは今後、今回の研究をもとにして、喫煙が排尿症状に与える影響のメカニズム解析など、基礎研究を進めていく予定としている。また、喫煙者による禁煙行動による排尿障害の改善なども検討していくとした。
【001キャプション】 過活動膀胱の罹患率は年齢を経るにつれて上昇傾向となっているが、いずれの年齢層においても喫煙習慣のない(NS)群に比べ、禁煙(ES)群・喫煙(CS)群は高い過活動膀胱の罹患率を示していた。特に、若年者において喫煙のリスクが高い傾向にあった。(出所:横浜市大Webサイト)