中国載人航天工程弁公室(CMSEO)は2020年10月1日、第3次宇宙飛行士候補者の選考を完了し、新たに18人の宇宙飛行士候補者を選出したと発表した。

この18人は今後訓練を経て、2021年から建造が始まる大型宇宙ステーション「天宮」ミッションに参加する。

  • 天宮

    中国が建造予定の大型宇宙ステーション「天宮」の想像図 (C) CMSEO

選ばれた18人の宇宙飛行士候補

今回の宇宙飛行士候補者の選考は、中国初の宇宙飛行士である楊利偉氏らが選ばれた1998年の第1次、2010年に行われた第2次に続くもので、2021年から大型宇宙ステーション「天宮」の建造、運用が始まることを見越して実施された。

募集は2018年5月から行われ、応募者は約2500人にもなったという。そこから1次選考、2次選考、最終選考を経て、今回18人の候補者が選ばれた。

過去の選考では、空軍のパイロットのみが選抜の対象となっており、そのなかから宇宙船のパイロットのほか、機器の操作や科学実験を行う担当者が選ばれたが、今回から新たに、宇宙船のパイロットのほか、宇宙船やステーションの制御・管理や技術実験の実施を担当する「宇宙飛行技術者(フライト・エンジニア)」と、ステーションにおける宇宙実験の運用を担当する「ペイロード・スペシャリスト(載荷専門家)」のカテゴリーが追加され、それぞれの役割が分けられることになった。

また、パイロットは空軍のパイロットから選ばれるものの、フライト・エンジニアは航空宇宙工学やその関連分野を専門とする技術者のなかから、ペイロード・スペシャリストは有人宇宙工学の宇宙科学研究や応用分野に従事する研究者のなかから選ばれるなど、中国では初めて、民間人出身の宇宙飛行士が誕生することになった。

最終的に選ばれたのは、パイロットが7人、フライト・エンジニアが7人、ペイロード・スペシャリストが4人の計18人。18人のうち1人は女性だという。それぞれの名前や経歴などは明らかになっていない。

この18人は今後、体系的な訓練を経て、宇宙ステーションの運用にたずさわる正式な宇宙飛行士として任命され、さまざまなミッションに参加することになるとしている。

また、今後の中国の有人宇宙計画の継続的な発展にともない、さらに追加の宇宙飛行士の選定も行う予定だという。

なお、米国航空宇宙局(NASA)はかつて、スペース・シャトルのペイロード・スペシャリストを宇宙飛行士(Astronaut)とは分類していなかったが、中国のペイロード・スペシャリスト(載荷専門家)は最初から宇宙飛行士(航天員)に位置づけられている。

宇宙ステーション「天宮」

今回選ばれた18人が向かうことになる「天宮」は、中国が2020年代に完成を目指す、大型の宇宙ステーションである。

天宮は大きく4つのモジュールからなり、ステーション中央部に位置するハブを介してそれぞれのモジュールを接続する。全長は30mほどで、一度に滞在できる飛行士の数は3人、設計寿命は10年だという。その姿かたちは、ソ連・ロシアが運用していた宇宙ステーション「ミール」に近い。

最初に打ち上げられるのは「天和」と名付けられたモジュールで、宇宙飛行士が生活したり、ステーション全体の制御や姿勢を担ったりといった、宇宙ステーションとして基本的な能力をもつ。続いて、宇宙実験室「問天」と「夢天」が打ち上げられ、軌道上で結合される。

さらに続いて、宇宙望遠鏡モジュール「巡天」も打ち上げ。ただ、巡天は恒久的な結合はされず、ステーションと編隊飛行しながら宇宙を観測し、ときどき推進剤の補給やメンテナンスのため天宮とドッキングする形式になるという。

天和の打ち上げは現時点で2021年の前半に予定されている。問天と夢天が結合し、天宮として完成するのは2023年ごろになるとされる。軌道は高度約380km、軌道傾斜角41~43度が計画されている。1回のミッションあたり3人の宇宙飛行士が滞在し、6か月間のローテーションで交代して運用される予定となっている。

中国は2003年、楊利偉宇宙飛行士が乗った「神舟五号」で初の有人飛行に成功。以来、計6回の有人ミッションを実施し、宇宙飛行や船外活動などの実績を積んできた。また、宇宙ステーションを打ち上げる超大型ロケット「長征五号」や、宇宙ステーション補給機「天舟」、そして天舟を打ち上げる新型ロケット「長征七号」などの開発、打ち上げ試験も行われている。

2011年には宇宙ステーション実験機「天宮一号」、2016年には「天宮二号」を打ち上げ、神舟宇宙船で宇宙飛行士が訪れたり、長征七号で打ち上げた天舟をドッキングさせるなどし、宇宙ステーションの運用に向けた経験も積み上げられている。

  • 天宮

    今年5月5日に打ち上げられた長征五号Bロケット。このロケットが、天宮の各モジュールを打ち上げることになる (C) CNSA

参考文献

http://www.cmse.gov.cn/xwzx/zhxw/202010/t20201001_47299.html