マカフィーは10月6日、コロナ禍での外出自粛期間における在宅勤務状況と子供の学習状況に関してIT、セキュリティの観点から調査を実施し、結果を発表した。
2017年から総務省主導で日本でのテレワーク普及促進に向けた取り組みが進み、修学面においても文部科学省の「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」により、生徒1人に1台のIT端末普及、小・中・高校・特別支援学校等での高速大容量の通信ネットワーク整備が進められている。
2020年に入り新型コロナウィルス感染症の感染が拡大し、勤務形態や学習環境における急激な変化を余儀なくされ、テレワークやオンライン授業の実施や学習への切り替えが急務になったと同社は指摘。日本においては外出自粛期間後、徐々に通勤や通学の形態に戻りつつあり、この状況を受け、在宅勤務やオンライン学習、外出自粛の環境下での課題や利点、世代間での考え方の違いについて、IT利用やセキュリティ面も含めた動向を把握すべく、今回の調査(2020年9月実施)を行った。
在宅勤務に関する問いでは、全体の36.2%が緊急事態宣言のもと在宅勤務を経験し、18.7%は現在も頻度はさまざまではあるものの在宅勤務を継続していると回答したほか、在宅勤務を取り入れている企業に対する印象は「良い(27.5%)」「どちらかというと良い(39.6%)」と肯定的な回答をしたのは全体の67.1%となった。
一方、在宅勤務が可能な業種にも関わらず導入しない企業に対する印象については、18歳から30代の回答者の5割以上が「どちらかというと印象が悪い」「印象が悪い」と回答したのに対し、40代以上の半数程度が「特に何も感じない(40代:49.6%、50代:49.1%、60代:50.0%)」と回答し、在宅勤務に対する意識の差が見られたという。
IT利用に積極的で新しい働き方へのシフトチェンジにも柔軟な比較的若い世代にとって、在宅勤務を導入しない企業は急速に変化する社会への対応力や将来性などの面で、魅力的な就業先と映らない可能性があることを示唆している結果となった。
また、在宅勤務・学習時の課題として「仕事や勉強をするスペースの確保(30.4%)」、「同、オンライン環境の機器類(20.6%)」「仕事や勉強をするためのオンラインの設定(17.3%)」といった回答が少なくなかった一方で、「ネットワーク環境や機器を揃えた(5.2%)」「勤務先から必要なツール類や費用が支給された(3.2%)」「在宅環境を整えるにあたり、ITツールに詳しくなった(2.7%)」といった回答者の割合は非常に低い結果となった。
外出自粛期間中におけるECサイトでの品薄状況とは異なり、課題として挙げられたものの実際に行動を起こした回答者はごく一部であったことが伺え、PCや周辺機器の在庫状況については、在宅勤務の導入で需要は増加したものの、サプライチェーンの乱れが供給に影響したことも考えられるという。
修学状況に関する問い(回答者は18歳以上の学生、18歳未満の就学児童を持つ保護者)では、オンライン授業を「受けた」と回答したのは全体の41.9%で、専門学校、短大、大学生(学生)は91.6%が受けたと回答しているのに対し、小学生、中学生、高校生はそれぞれ15.1%、26.8%、45.9%に留まり、年齢が下がるにつれオンライン授業の普及が低い状況となった。
オンライン学習時のデバイス利用については、子供専用のPCを使用している割合が、学生は67.3%と高い結果に対して、小学生から高校生の約3割(小学生:38.3%、中学生:39.3% 、高校生:31.3%)は家族のPCを使用したと回答し、スマートフォンを利用したという回答者も見られた。
さらに、インターネット利用やオンライン学習をする際の保護者の心配な点については「先生や学校による授業の質の差(50.1%)」、次に「ゲームをしていないか(34.8%)」、そして「サイバー犯罪に遭わないか(21.08%)」と回答ぢ、政府が将来的に生徒1人に1台のIT端末普及を用いた授業を目指す中、オンライン授業のメリットを取り入れた学びを継続していくためにも、ハード・ソフト両面の整備の加速が不可欠であると考えられるという。
しかしながら、監視用ソフトウェアに関する質問では、30.5%の回答者が「ウェブサイトやコンテンツのフィルタリング機能を使用」と回答したのに対し「設定しなくても問題ない(12.2%)」「よく分からないため口頭での注意に留まる(10.8%)」「手間がかかるため、設定していない(10.4%)」「そのようなソフトウェアについて知らない(9.1%)」など、監視ソフトウェアの未使用ないしは未使用と同等と思われる状況が40%を超える結果となり、子供が家庭内でIT利用をする際の懸念点は明らかな反面、それらに対するセキュリティ対策が実際は打てていないという実態が浮き彫りになった。しかし、小学生では53.7%が“オンラインサービスやソーシャルメディアを利用していない"と回答していることも影響している可能性があるという。
今回の調査では、コロナ禍を機に在宅勤務の導入が進んだにもかかわらず、継続している企業は一部であり、家庭で就業する環境の構築は一時期言われたほど進展していない様子が伺えたほか、子供専用のIT端末の普及率はまだ低く、保護者のセキュリティに対する関心の低さも明らかになった。今後、就業や修学の場面でますますデジタル化が進み、IT利用が欠かせなくなることが想定される中、一人ひとりがITやセキュリティに関心を持ち、より安全で快適な環境で仕事や学習をする意識を持つよう、支援することが重要だとの認識を同社は示している。