• 宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の募集

    1998年の2度目の宇宙飛行中の向井千秋さん (C)NASA

前回の記事でISS(国際宇宙ステーション)で使う生活用品をJAXAが募集していることを紹介した。9月4日までに集まったアイデアの中から安全性などの条件をクリアした生活用品が2022年度以降、ISSに運ばれ、宇宙飛行士たちが実際に使うことになる。

JAXAは2020年7月、「THINK SPACE LIFE」プラットフォームを立ち上げ、宇宙生活の課題やニーズにどんなものがあり、何があれば宇宙と地上の両方の課題解決に役立つのかをテーマに様々な企業が集う、「アイデア共創ワークショップ」を開催している。

7月16日にはワコールとJAXAが「健康・美しさ・快適さ」をテーマにワークショップを開催。向井千秋 宇宙飛行士、山崎直子 宇宙飛行士、極地建築家の村上祐資氏(模擬火星基地や南極越冬隊などで約1000日の閉鎖生活を経験)、ANA宇宙事業化プロジェクトメンバーで客室乗務員の経験が豊富な江島まゆみさんらが語り合った。「身だしなみ」や「匂い」「睡眠」など宇宙や極限環境だけでなく、長引くStay homeライフにも役立つヒントが多々あった。さっそく紹介しよう。

  • 宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の募集

    7月16日のワークショップには、スイスで登山ガイドをする西村志津さんも遠隔参加した(奥のモニター)

オンとオフの切り替えはどうしたらいいの?

宇宙は生活から遠いと思っていた人たちも、ここ数か月間のテレワークや遠隔授業で自宅からあまり出ない生活を送る中で「宇宙の閉鎖生活ってこういうことかな」と少し身近にイメージできたかもしれない。家で仕事をしていると(私もそうだが)オンとオフの切り替えが難しい。同じ空間で過ごすために、仕事をエンドレスで続けてしまったり、逆になかなか集中できなかったり。「オンとオフの切り替えはどんな工夫をされていますか?」という質問がまず参加者から投げかけられた。

極地建築家の村上さんは「空間だけじゃなく、出会う人も同じですよね。(宇宙や極地では)ドラマチックな事ばかり起こるわけではなくてルーティンの作業がずっと続くのが難しい。その中で、どこに節目を作るのかがカギになります」

  • 宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の募集

    極地建築家の村上祐資さん

節目の作り方には色々な方法があると村上さんは続ける。例えば衣服。「寝間着と作業着。同じメンバーですごすと何もかも見知った(家族のような)関係になるが、他人のためというよりは、自分のために意図的に着替える。極地で数多くのクルーを見てきましたが、切り替えのために着替える人は、安定しているなという気がします」。

食事の時間も大事な節目の時間だ。「なるべくゆっくり食べる。忙しいとどうしてもぱぱっと済ませようという気持ちが出てきますが、食事はいったん落ち着くための時間にすることがすごく大事です」(村上さん)。これは耳が痛い。締め切りがあると、特に昼ご飯はいい加減になりがちだ。

向井さんは、あえて今やっていることと異なる「アクティビティ」を入れるといいと言う。「たとえ同じ空間にいても、仕事モードから仕事が終わった時の切り替えのために、音楽を聞いたり地球の景色を見たりオンラインで外の世界の人とつながったりします」。また、人と会う予定を入れれば、洋服を着替えたりお化粧をしたりして、ぴりっとする。どうしてもだらっとしてしまうのであれば、そういう予定を入れるのもいいのでは、と話す。