デジタルマーケティングの高度化が進む中、事業会社の広告展開を引き受けるパブリッシャーにとって、クライアントのマーケティングニーズに応える広告商品を展開していくことは、大きな課題だ。広告フォーマットのリッチ化はもちろん、その効果測定、効果分析においても、これからは従来のKPIとは異なるアングルが求められる。様々なデータを組み合わせた多角的な分析も重要となるだろう。パブリッシャー企業にも、デジタルトランスフォーメーションが必要なのだ。

では、データを活用した広告展開にはどのような事例があるのだろうか。トレジャーデータが先ほど開催したオンラインセミナー「PLAZMA 12」では、経済メディア「JBpress」を運営する日本ビジネスプレスで、企画推進部 Data & Insights StudioのChief Contents Data Analystを務める鵜山雄介氏が、『視聴者と非視聴者で行動に明らかな違い!データで分かったシナジー効果やユーザーフローを一挙公開』と題した講演のなかで紹介した。なお、聞き手はブライトコーブのMarketing Managerである大野耕平氏が務めた。

  • (右から)日本ビジネスプレスの鵜山雄介氏とブライトコーブの大野耕平氏

自社メディア、提携メディア、広告主のデータを統合分析

鵜山氏によると、2008年に創業した日本ビジネスプレスは、経済メディア「JBpress」の運営だけでなく、50以上のデジタルメディアに導入しているメディア運用支援システム「Media Weaver」を展開。そして、コンテンツ制作・配信・分析、オンラインイベントの集客・運営など企業のマーケティング支援も行っているという。2013年には、データ基盤として「Treasure Data CDP」を導入し、データを活用した商品・サービスの開発に活用しているという。

パブリッシャー企業である同社がTreasure Data CDPを導入した背景について、鵜山氏は「広告主に対して、より高度なマーケティング支援を提供できるのではという考えで導入した」と説明。メディア上の行動履歴、広告接触や動画の視聴履歴などのデータを外部の企業データと統合してCDP上で管理しているのだという。

「ベースとなるデータに対して各データがちゃんと連携できているか。CookieやIPアドレスなどを使い各データが紐づいているか。データが離れ小島にならないようにすることが重要だと考えている」(鵜山氏)

そして、Treasure Data CDPを広告ビジネスの中でどう活用するかについても、特徴があるのだという。具体的には、Treasure Data CDPを介してクライアントのデータと連携して分析に活用しているほか、Media Weaverを導入している企業ともアライアンスを組んでデータを取得し、広告展開とメディアのコンテンツ接触履歴、そしてクライアントサイトでの行動履歴との相関性や行動変化を分析しているのだそうだ。

  • 広告接触履歴、自社メディアでの行動履歴にクライアントのデータ、提携メディアのデータを組み合わせ、広告展開のデータ基盤を形成している

「得られたデータは、クライアントのマーケティング戦略や具体的な施策を考える材料にしている」と鵜山氏はデータを統合管理するメリットを語ると、大野氏も「これまでクライアント側はメディアでの顧客行動がわからない部分が多かった。自社メディアのデータだけではなく、クライアントデータやアライアンスメディアのデータを一括管理できているというのは、大きな強みになるのでは」と評価した。