順天堂大学は7月7日、「CCHCR1(Coiled-coil alpha-herical rod protein 1)」というタンパクに円形脱毛症の原因遺伝子の1つがあることを同定したと発表した。

同成果は、同大大学院医学研究科皮膚科学・アレルギー学の池田志斈 教授、東海大学総合医学研究所の岡晃 講師らの共同研究グループによるもの。詳細は医学雑誌「EBioMedicine」(オンライン版)に掲載された。

円形脱毛症は、その発症機序として自己免疫説が唱えられているほか、多くの遺伝子や要因が発症に関連する多因子性疾患であるとされているが、その原因や仕組みはよくわかっていなかった。今回の研究は、そうした円形脱毛症に関する原因遺伝子の解明に向けた取り組みで、円形脱毛症の患者と健常者の塩基配列を比較。その結果、CCHCR1にアミノ酸置換が生じており、これが円形脱毛症の発症リスクを高める対立遺伝子(リスクアリル)であることを突き止めたという。

実際にCCHCR1遺伝子のリスクアリルを導入したゲノム編集マウスを作成したところ、ヒトの円形脱毛症患者に類似する脱毛を確認したとする。また、CCHCR1のリスクアリルの有無と、それぞれの毛髪の毛包に発現している遺伝子のパターンと毛髪の幹(毛幹)の状態についての比較も実施。その結果、リスクアリルのある円形脱毛症患者の遺伝子発現パターンならびに毛幹の状態はゲノム編集マウスとよく似ていることも確認したという。

なお、研究グループでは今後、CCHCR1遺伝子のリスクアリルによりなぜ円形脱毛症が生じるか、発症メカニズムの解明を進める予定としているほか、CCHCR1遺伝子のリスクアリルを持つ症例と持たない症例との違いを明らかにすることで、円形脱毛症のタイプ別診断法と各タイプに特化した治療法の開発も可能になると考えられるとコメントしている。

  • CCHCR1遺伝子におけるリスクアリルの有無と円形脱毛症との関連

    CCHCR1遺伝子におけるリスクアリルの有無と円形脱毛症との関連 (出所:順天堂大学Webサイト)