三井住友海上火災のデジタライゼーション

デジタライゼーションの取り組み事例として登壇した三井住友海上火災保険 デジタル戦略部長の本山智之氏は、日本IBMの伊藤常務執行役員との対談方式で講演。MS&ADインシュアランスグループの中期経営計画「Vision2021」において、デシタライゼーションを重点戦略のひとつに掲げていることを示しながら、「商品の開発、保険の加入、支払といった一連のプロセスをデジタル化するには、部門横断が前提となる。改革、創造、展開の3つの枠組みで、デジタライゼーションを推進しているところだ」と語る。

  • 三井住友海上火災保険 デジタル戦略部長の本山智之氏

改革では、国内の既存ビジネスを改革し、競争力を強化し、業務効率化を実現する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。創造では、国内のデータやデジタル技術の活用や、デジタル人財の拡充により、既存ビジネスモデルを変革するとともに、新たなビジネスを創造する「デジタルイノベーション(DI)」。展開では、国内外で蓄積したノウハウを相互に展開し、グローバルにDXやDIを推進するデジタルグローバリゼーション(DG)に、それぞれ取り組んでいることを紹介。本山氏は、「デジタライゼーションにより、お客様の体験価値向上と業務生産性向上を図り、事業環境の変化に対応し、持続的成長を実現することを目指している」と述べた。

  • 三井住友海上におけるデジタライゼーション

また、「損害保険会社は、高度経済成長時代には、住宅の増加に伴う火災保険の商品化、マイカーの普及においては自動車保険の商品化など、時代の変化にあわせたリスクヘッジを行ってきた。新型コロナウイルスは変革の大きなチャンスであり、新たな時代に適用した保険やサービスを提供していかなくてはならない。デジタライゼーションとデータの活用によって、損害保険会社が本来果たす役割を担っていきたい」と述べた。

同氏は、同社が2019年5月から提供を開始しているRisTechについても触れた。同サービスは、三井住友海上火災保険同社が保有している顧客の契約データや事故データ、取引先企業のデータ、公開されている統計データなどを活用して、同社のデータサイエンティストがデータ分析。企業の課題を解決するというサービスだ。すでに100社以上の企業が契約を検討しており、事故の予兆把握や、企業が持つ課題の解決につなげることができるという。

  • RisTech

一方でデータ活用の課題として、メタデータの管理が一元化されていないこと、複数のデータベースが混在し、欲しいデータの取得が難しいといった点をあげ、「保険データの使い方、整備の方法が、商品や部門ごとに『秘伝のたれ』のようになっており、横断的なデータ分析が難しい。この改善に取り組んでいる。IBM Cloud Pak for Dataなどを活用して、PoCを進めているところである」とし、「IBM SPSSソフトウェアによる統計解析から機械学習、IBM Cloud Pak for Dataによるデータの管理、分析が、ひとつのプラットフォームで構築でき、それを1社に任せられるところに、日本IBMの特徴がある」と述べた。