NTT東日本は6月3日、千葉県いすみ市、つるかめ農園、ワイヤレスデザイン、IoTBASEの協力のもと、有機無農薬の稲作で重要な「水の管理」を効率化し、品質向上に繋げる取り組みを、2020年6月から開始すると発表した。実施期間は2020年6月~2020年8月。

いすみ市は、生物多様性の保全など環境への負荷低減を図った有機作物の栽培に力を入れており、農林水産大臣賞(※1)を受賞するといった成果を出している一方で、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増大など、厳しい課題がある。

いすみ市で農業を営むつるかめ農園では、肥料も農薬も使わない「自然栽培」で米作りを行っている。除草剤を使わない自然栽培の米作りでは、雑草対策の一つとして「深水管理(※2)」の技術を用いることから、除草剤を使う稲作と比べ水田の水管理をより厳密に行う必要があり、1日1回以上の見回りは欠かせないという。また、昨今の新型コロナウイルスの影響もあり人手が足りず、飛び地を含む40枚以上の水田の水管理は、つるかめ農園にとって負担になっている背景があった。

(※1)農林水産省が実施する「令和元年度未来につながる持続可能な農業推進コンクール」での賞                                   (※2)有機栽培における雑草防除のための手法の一つ

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今回の取り組みによって、無線と光回線を経由して水位データをクラウドへ送信、IoTデータ可視化アプリを通じて、水田の水位を常時監視できるようになる。日々の見回り稼働を軽減するとともに、漏水をいち早く検知し、速やかに対処できるようする。

各社の役割として、NTT東日本は、トライアル全体統括(仮説と課題解決策、効果測定方法の検討、ビジネスモデルの検討)、光Wi-Fiの提供、ビジネス化に向けた現地対応(設置、保守等)体制の検討を行う。

いすみ市は、有機農業の推進による地域振興に、トライアルで得られた知見を提供し、つるかめ農園は、トライアル環境となる水田の提供、ソリューションの有効性に関する農家の視点からのアドバイスを行う。

ワイヤレスデザインは、水位センサーデバイスの設計・開発、LPWAを用いたIoT通信環境の構築を担い、IoTBASEは、IoTデータ可視化アプリ「Canvas」、水田での水位監視用途に対応した機能追加を提供する。

  • 水位センサーの仕組み

具体的には、グラフ表示で時間ごとの水位の変化を把握し、水位が設定した閾(しきい)値を超えた場合にメールで通知する。

また、水位センサーの通信にLPWA規格を用いることで、省電力で水位データの送信が可能になるという。

今後、有機米の生産プロセスの効率化を引き続き支援するとともに、物流、販売まで含めた、いすみ地域における農業分野のトータルでの課題解決に向けて検討を進めるとのことだ。