メルク・アンド・カンパニー(MSD)は5月26日(米国時間)、新型コロナウイルス感染症に対する取り組みとして、ワクチン開発に関する2件の契約ならびに新規抗ウイルス薬候補の開発を進めるための1件の研究提携を発表した。

新型コロナワクチンの臨床試験を2020年後半より開始

新型コロナのワクチン開発に関しての1件目は、新型コロナウイルス感染症を含む感染症に対するワクチンや免疫修飾療法を専門とするThemis Bioscienceの買収。Themisは、麻疹ウイルスベクタープラットフォームを用いて開発するワクチン候補や免疫修飾療法の幅広いパイプラインを有しており、新型コロナのワクチン開発に向け、世界連携でワクチン開発を促進するために設立された官民連携パートナーシップ「CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations:感染症流行対策イノベーション連合)」より資金調達を行い、Institut Pasteurとピッツバーグ大学のThe Center for Vaccine Researchとコンソーシアムを結成するなどの取り組みを進めていた。

この買収についてMSDでは、麻疹ウイルスベクタープラットフォームを用いたワクチン候補の開発における両社の現在の協力体制を発展させるものであり、これによりThemisの新型コロナウイルスに対するワクチン候補の開発を加速させるとしている。このワクチン候補について同社は現在、前臨床開発の段階で、臨床試験を2020年後半に開始する予定としている。

新型コロナのワクチン開発に関しての2件目は、喫緊のグローバルヘルスのアンメットニーズに対応することを専門とする非営利科学研究組織IAVIとの間に、COVID-19の予防に向けたワクチン開発の提携を行ったこと。同契約に基づき、両者は協力して、IAVIの研究者によって設計された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン候補の開発と国際臨床試験を進めていくとしている。こちらのワクチン候補は現在、前臨床開発の段階で、臨床試験は2020年後半の開始を予定しているという。

新型コロナ向け経口抗ウイルス薬候補の開発で協力体制を構築

そして、新規抗ウイルス薬候補の開発を進めるための研究提携として、Ridgeback Biotherapeuticsと新型コロナウイルス感染症の治療薬として早期臨床開発が進められている経口抗ウイルス薬候補のRNAウイルス複製阻害薬「EIDD-2801」の開発で協力する契約を締結したとしている。

新型コロナウイルス感染症患者を対象とするEIDD-2801の評価はまだ初期段階ながら、第1相試験では良好な忍容性が認められたという。

また、今回の契約に基づき、MSDは子会社を通してEIDD-2801と関連分子の開発および製品化の世界的な独占権を取得することになるという。

なお、MSDでは、自社で開発を進めているワクチンや治療薬について、広くアクセスが可能で求めやすい価格で世界中に提供したいという考えを示しており、可能な限り速やかにこの目標を達成できるよう取り組んでいくとしている。