AIを利用した自動化などの技術トレンドは、一般消費者の生活だけではなく、オフィスも変えつつある。American Expressの情報サイトOpen Forumが「6 Business Trends to Watch Out for in 2020」として、6つのトレンドを紹介している。

寄稿者のJulie Bawden-Davisさんはガーデニングから健康、スモールビジネスシーンなど書籍やWebへの記事約3000本の執筆を誇る。ビジネステックの話題も多く、AutomationやAI、ビッグデータからリテールセールにランサムウェアやサイバーセキュリティのTipsまで硬軟織り交ぜたトピックスを提供。カバーする範囲の広さに驚かされるが、Julie Bawden-Davisさんは米国のジャーナリストやノンフィクション作家の専門職協会ASJA(American Society of Journalists and Authors)のメンバーにも名を連ねている。各記事では、ソースやエビデンスに公的機関や学術論文発表等へのリンクを多用し、論拠を補完している。そんな幅広い情報収集を行うJulie Bawden-Davisさんが2020年に注意を払うべきだとするビジネステックのトレンドは下記の6つ。

1.AIと機械学習
日本でもAIが活躍するサービスや実証実験が頻繁にリリースされた2019年だったが、この傾向は今後も加速すると予想できる。シリコンバレーを中心にキャリアコンサルタントを行うPatrick Algrim氏は、「AIが進化すると、企業がAIと機械学習をどのように活用するのかを計画支援するスキルのある人が求められる」と予想している。手軽に活用できるサービスも増えており、実際にどう使っていくのか?個々の企業でより実用的な使い方が増加していくということだ。

また音声による検索も注目のポイントに挙げている。Voice Searchの精度や機能が向上し、普及することで企業は今後、顧客に対して音声でサイトをナビゲートしたり、探したい商品を探せるようなユーザーインターフェイスを用意することが求められるようになるだろうと指摘している。音声での検索はモバイルとの親和性が高く、これに対応すべくモバイルWebサイトの改善を促す記事へのリンクを載せている。

2.デジタルマーケティングでは人の役割が重要に
AIと機械学習がトレンドとなる一方で、人間の要素が重要になる場面も出てくるという。Caril Communicationsのメディアマーケティングスペシャリスト、Carla Williams Johnson氏は、「人間は社会的な生き物。だからこそ、対面で話す機会を持つことは重要」と述べている。直接つながることで距離を感じなくなり、信頼が高まる。普及が予想されるとは言え、実際の人との対応と比べるとまだまだ足りないところが当然ある。

オーストラリアのブライダルショップEmerald BridalのSandra Lin氏は、"コールバックによる顧客とのやりとりでの成功率は、電子メールよりもはるかに高い"とチャットボットを提供する一方で、Webサイトで自社の電話番号を明記すべきとする。特に"個性"は汎用性を追求するAIとは真逆なものだ。重要な部分での人の役割が消え失せることは無いだろう。

3.体験(エクスペリエンス)マーケティング
ここ数年、あちこちで言われる"体験(エクスペリエンス)"というキーワード。2020年もエクスペリエンスをあちこちで見かけることになる。この"エクスペリエンス"がクリティカルマス(普及が一気に跳ね上がる分岐点)に達するという見方もあるそうだ。記事では旅行サイトでユニークな体験型旅行を提供するオーナーのコメントやブランドエクスペリエンスの重要性をマークしているが、いずれも他とは違う個性がポイントだ。日本においても伊豆半島で昨年行われた観光型MaaSの実証などが成果を挙げている(マイナビニュース内記事「伊豆半島で行われた大規模な観光型MaaS実証実験、その結果は?」 )。モバイルを活用し、乗り物や目的地での決済のわずらわしさを解消するシームレスな"体験"も心地よいものであろうと推測できる。

どこへいっても、何を買っても同じであれば、消費したいとも思わないし、買おうとも思わない。やはり新しいもの、新しいことを体験したいのが人の常だ。企業においては、自社のエクスペリエンス戦略について考えておくのも良さそうだ。

4.リモートワーク(テレワーク)
日本でも今回の新型コロナウイルスで否応なくリモートワークが広がっている。これからオリンピックに向けて、さらに普及が予想される。テレワークの環境が整備されていないため実行ができないという最近の調査結果(マイナビニュース内記事「全国2万人に聞いた、テレワークを実施していない理由第1位は?」 )もあるが、東京都では新型コロナウイルス感染症対策として中小企業へのテレワーク導入に必要な機器やソフトの経費助成なども打ち出している(東京都公式Webサイト)。今後、会社を離れて働くリモートワークやICT機器を取り入れて遠隔で業務に取り組むテレワークへの取り組みが加速していくことは間違いないだろう。

5.コンテンツマーケティング
マーケティング関連のキーワードとして上がったのが、コンテンツマーケティングだ。SEO(検索エンジン最適化)として、ユーザーがGoogleなど検索エンジンを使ったときに上位に表示されるSERPS(Search Engine Result Page)があるが、複数の検索結果が並ぶ中で目立つようにするためには、「コンテンツマーケティングを強化すべき」とProsperity Mediaの創業者、James Norquay氏はアドバイスしている。

リンクにはライティングをはじめとしたコンテンツ形成のためのアドバイスが掲載してある。もちろんコンテンツはデザインや写真、動画やコードなど多くの要素から成立するものだが、映画にもプロットやシナリオがある。今のところ、人々に的確に物事を伝達する手段は、よくよく考えると言葉や文字が主流である。ブログやインタビューを通じて、サービスや製品のプロフィールを多角的に伝える方法などを紹介している。単にSEO対策をしたり、動画コンテンツを用意するだけでは不十分で、様々なチャネルを束ねる統合的なマーケティング計画を持つ必要性を説いている。

6.サイバーセキュリティ
デジタル化が進む現在において、サイバーセキュリティは、規模の大小によらずあらゆる企業に関係がある。フィッシング詐欺やランサムウェアはニュースにならなくてももはや日常的に起こる出来事になっている。どうやってサイバー空間で身を守るかの対策とリスク管理を考えておこうと啓蒙している。

インターネットに接続された環境では必ずリスクが生じる。守るべきものが何であるか?を明確にし、絶対漏れてはならないものはネットワークの分離やオフラインで運用するなど厳格性と利便性の両極を常に意識することが大切だ。