光触媒の新型コロナウイルスに対する性能試験を開始
東芝ならびに東芝デバイス&ストレージは2月28日、東芝デバイス&ストレージ子会社の東芝マテリアルが販売を行っている酸化タングステンを用いた光触媒「ルネキャット」の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性試験を開始したことを発表した。
実際に抗ウイルス性試験を行うのは、同社から委託を受けた外部の検査機関で、具体的な機関名、実施期間については明らかにされていないが、同社によれば、委託そのものは28日付で行っており、一般的な検査事例としては終了までに月単位を擁することが多いとしている。
酸化タングステンを活用した光触媒
一般的な光触媒の材料は「酸化チタン」だが、同社のルネキャットは「酸化タングステン」を採用している点が特徴だという。光触媒は、光が当たると表面に電子と正孔が形成され、酸化作用を利用することで臭いや細菌などといった有害物質の分解を行うことを可能とするもの。ノーベル賞化学賞の候補者として毎年のように名前が挙げられている藤嶋昭氏(東京理科大学栄誉教授、同大総合研究機構 光触媒国際研究センター長)が研究者としてよく知られている。
酸化タングステンと酸化チタンの大きな違いは酸化チタンはバンドギャップが3eV以上であり、機能を発現するためには紫外線の照射が必要だが、酸化タングステンは、可視光や蛍光灯照明条件でもさまざまな揮発性有機化合物(VOC)を酸化分解するだけの活性を有しているという点。そのため、室内でも光触媒効果を発揮することができるとして、さまざまな産業への応用が期待されてきた。
ルネキャットの効果はどの程度か?
同社が手掛けるルネキャットは一般向けにはスプレータイプの製品が提供されているほか、産業分野としては、業務用液体や冷蔵庫内の除菌・脱臭用スラリー、塗布済みの壁紙、脱臭器に装着する脱臭フィルタといったアプリケーションも提供しているという。
また、その効果としては、スプレーとしては床や壁に噴霧することで、鳥インフルエンザウイルスやO157、黄色ブドウ球菌などを抑制できることが外部機関の試験で確認されているという。
光触媒の効果はどの程度続くのか?
光触媒の効果は、物質がそこに存在し、光が照射される限りは持続する。ルネキャットの場合も、噴霧した粒子が付着し続ける限りは効果が持続するという。ただし、塗布した箇所が剥がれるような外的圧力があれば、効果はなくなってしまうと同社では説明している。
なお、東芝グループが酸化タングステンによる光触媒を手掛けるのは、1909年に東芝の前身である東京電気が、日本で初めて電球用タングステン・フィラメントの製造を開始して以降、培ってきたタングステンに関するノウハウを有しているためで、ルネキャットはそうした積み重ねてきたノウハウを総動員して生み出されたものだという。