英国は気象と気候に特化した高性能のスーパーコンピューターを開発する。計算能力は現行機の6倍。2022年から2032年にかけて現行機を順次置き換えていく。現在3時間ごとの天気予報を1時間ごとにきめ細かく伝えることが可能になるのに加え、暴風雨などの悪天候が予想される際にはタイムリーな情報を提供する。気候変動の影響予測にも力を入れる。

  • alt

    2月中旬に英国を襲った暴風雨デニスの衛星写真(英気象庁提供)

10年間の事業費は12億ポンド(約1700億円)。英気象庁が新スパコンを管理運営する。日本の気象庁の最新スパコンは運用費も合わせた開発費が約100億円なのに比べると、はるかに巨額の投資だ。欧州各国が加盟する欧州中期予報センターも近くスパコンを更新するが、英国の事業は独立しており、ブレグジッド(英国の欧州連合離脱)を象徴する計画になる。

きめ細かな天気予報のほか、新スパコンで想定されるサービスは(1)英環境庁が手がける洪水対策を支援する正確な降雨予測(2)航空機の離着陸時に危険なダウンバースト(強い下降気流)などの予測(3)落雷などの情報提供による停電やサージ(瞬間的な過大電流)の緩和――など。

スパコンは超高速計算と引き替えに膨大な電力を消費する。英BBCによると、新スパコンは地熱発電や水力発電など再生可能エネルギーが豊富なアイスランドかノルウェーに設置し、低炭素化を目指すという。

英気象庁長官は「この投資は最終的に、悪天候に関する早くて正確な警報と、気候変動の中でレジリエントな世界を構築するために必要な情報を提供し、英国全体の低炭素経済への移行を支援する」と話している。

関連記事

「台風19号などの豪雨・洪水被害をスパコンで再現 温暖化リスクシンポで報告」

「スパコン『京』、多くの成果残し30日にシャットダウン 後継機『富岳』に引き継ぐ」