2020年1月30日、量子科学技術研究開発機構(QST)と三菱重工業は、三菱重工神戸造船所二見工場においてフランスで建設が進む「国際熱核融合実験炉(ITER)」用トロイダル磁場コイル初号機(TFコイル)の完成披露式典を開催した。
ITERはクライオスタットまでの構造帯を見ると高さ30m、幅30m、重量23,000トン。参加国がそれぞれ必要な機器を分担製作し、ITERサイトを含む建設費用は約2兆4500億円。運転開始は2025年を目標としており、核融合での発電実証スタートはロードマップ上で2035年とされている。
今回完成したTFコイル初号機は、真空容器内で生じる高さ約7m、外径約16m、体積約800m3のプラズマを閉じ込めるために必要不可欠な機器のひとつ。ITER用TFコイル1基あたり、全高16.5m、最大幅9m、総重量310トン。ITERではTFコイル18基が真空容器を取り囲むように放射状にインストールされ、19基のうち日本は9基の製作を担当している。残る10基は欧州が分担して製作。うち1基はスペアになる。また内側構造物は19基分を三菱重工神戸造船所二見工場で製作となっているほか、初号機を含む5基分の巻線部は三菱電機、外側構造物は韓国が製作を担当する。なお横から見ると「D」に見えるため、Dコイルとも呼ばれる。
現地で見ても「デカい」だったのだが、ビルでいえば5階立てほどで、小田急電鉄ロマンスカーミュージアム(2021年完成予定)と同じ高さであったり、ネオ・ジオン製モビルスーツ「カプール」の全高と同じだ。映画館でいえば近年目立つようになった大型スクリーンの横幅をイメージしてみるといいだろう。ちなみに、2020年1月29日まではJT-60SAのTFコイルが世界最大だったが、今回のITER用TFコイルの完成で、同TFコイルが世界最大になる。またコイルとしても現時点で世界最大(のハズ)だが、2021年完成予定のITER用ポロイダル磁場コイルは、最大径約26mとより巨大だ。
上記した巨大なプラズマの閉じ込めには、約12Tが必要になり、強度を得るために肉厚で高い精度が要求されている。巻線部は周長約30mに対し8mm以内の精度に加えて、262種類のカバープレートの管理となっているほか、一体化における条件は、巻線位置合わせ0.2mm、溶接後最終機械加工の平行度0.4mm。日本は他の機器も含めて重要なパーツを多く担当しており、この点についてITER機構長ベルナール・ビゴ氏は、ITER建設における中心的存在であると語った。
これまでにない大きさの超伝導コイルになり、量子科学技術研究開発機構と三菱重工はニオブ・スズ超伝導体を高精度で巻線する技術開発するなどしている。2005年から量子科学技術研究開発機構が製作技術開発を進め、2012年から三菱重工が製作に参加。足掛け15年での初号機完成となった。初号機は2月下旬にフランスに向けて出航し、2号機は2020年3月に完成予定、3号機は2020年内の完成の見込みだ。