東京工業大学、信州大学および電通国際情報サービス(以下ISID)の共同プロジェクトチームは3月20日、東京工業大学COI「サイレントボイスとの共感」地球インクルーシブセンシング研究拠点のもと、最先端エッジAI技術を活用した牛の行動観察システムを開発したことを発表した。
新たに開発された行動推定システムは、エッジデバイスとクラウドのAI処理量と通信量のバランスを最適化することで、これまで課題であったエッジデバイスの長バッテリー寿命とクラウド間の通信のコスト削減に対応できる。
この行動推定システムは、2021年の社会実装を目指し、信州大学農学部で2019年4月から2020年3月まで実証実験を実施する。この実証実験で用いる「感じて考える首輪」のプロトタイプには、エッジデバイスでAI処理を実行するのに必要な、高性能で低消費電力なプロセッサを搭載したソニーセミコンダクタソリューションズのIoT向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボード「SPRESENSE」を採用し、東京工業大学が開発した牛行動AI分析アルゴリズムを組み込んでいる。
これにより、歩行や摂食といった行動・状態をAI処理で推定してデータ量を圧縮し、低消費電力・低ビットレート・広域カバレッジ(LPWA)の無線技術を活用することで、多状態推定、放牧利用、長期間動作を実現するということだ。
なお、各機関の役割としては、東京工業大学が同システム研究開発のチームリーダーを務めるとともに加速度センサをはじめとするセンサ類の開発、AI処理のデバイスへの実装方式の開発、畜産農家への新システム普及の検討、アニマルウェルフェアの社会的受容性の研究を担当する。
信州大学は、同システム研究開発のサブリーダーを務めるとともに、農学部附属AFC農場における牛の行動データをもとに、エッジAI学習のための教師データの作成、エッジAI処理による行動分類の検証、アニマルウェルフェアに適したエッジデバイスの装着方法、飼育環境整備の研究を担当。
ISIDは、システム全体の構成検討、クラウドサービスFACEREを活用したデータ収集・解析システムの構築と解析結果を可視化するアプリケーションの開発を担当する。