日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2月8日、産業分野におけるIoT(IIoT)の活用を促進することを目的に、コンバージドエッジシステムとして、新たなハードウェアならびにOTからITの領域まで幅広くカバー可能なソフトウェアをソリューションとして提供していくことを明らかにした。

これまでも同社はエッジコンピューティング向けにコンバージドIoT向けシステム「Edgeline EL1000/4000」を販売してきたが、今回、新たにファクトリコンピュータ的な役割もこなせる「Edgeline EL300」を追加。また、ソフトウェアとして、エッジやクラウドのさまざまなデバイスプロトコルをサポートするソフトウェア「Edgeline OT Link Platform Software」ならびに、エッジ専用に設計されたシステム管理ソリューション「Edgeline Integrated System Manager(iSM)/Edgeline Infrastructure Manager(EIM)」を追加することで、コンバージドエッジシステムという製品カテゴリに対して、ソリューションそのものを提供することが可能となった。

  • ハイパーコンバージドシステム

    今回の発表ソリューションの概要

よりエッジ側での活用に配慮した作りのEL300

従来のEdgelineシリーズの製品に比べ、よりエッジ側で利用可能なEL300は、COM Express準拠のマザーボードをベースにしたシステム。標準仕様ではCPUはCore i5-7300U(デュアルコア2.6GHz)だが、Core i7ならびにAtomの対応も予定とのこと(Core i7、Atomは2019年4月以降の発売を予定)。

  • EL300

    EL300の概要

また、顧客の要望に応じてI/Oパネルの変更ができる模様のほか、筐体下部には拡張用のコネクタも用意されており、将来的にはこの拡張コネクタに接続可能なバッテリーキット(UPSとして利用)やインタフェースの増設キットなどを提供することも計画されているとのことで、カスタマのニーズに応じた機能の拡張を図ることも可能になるとしている。

  • EL300のI/O

    I/O部はニーズに応じて変更が可能

さらに、従来のEL1000/4000は稼動温度域が0~+55℃であったものを、-30~+70℃とより過酷な温度環境下でも動作可能としたほか、IP50(防塵)により、ダーティな環境への対応も可能とした。

  • EL300

    EL300の実機。I/O部分が異なっているのが分かる

  • alt属性はこちら
  • alt属性はこちら
  • EL300の各部の説明 (出所:HPE Edgeline EL300 Converged Edge System - Product documentation)

コンバージドエッジシステムの核となるOT Link

一方の今回発表された3つのソフトウェアの中でも、EL300を制御システム、データ取得システム、産業ネットワーク管理システムという3つの役割として活躍させることを可能とする肝とも言えるのがOT Linkとなる。

製造ラインで活用されるさまざまなPLCや産業用イーサネットのプロトコルを標準でサポートしつつ、AWSやMicrosoft Azure、ThingWorx(PTC)などのクラウドサービスとも連携を図ることができるツールで、GUIを用いてフローを作成することで、基本的なエッジ処理をコーディング不要で実装することができるほか、カスタマやISVが提供するDockerベースのアプリケーションのデプロイ管理機能も提供されるという。

  • OT Link

    OT Linkの活用イメージ

こちらは2019年5月以降の提供開始が予定されているという。

  • OT Link

    OT Linkの構成イメージ

エッジでエンプラクラスのシステム管理を実現

OT Link以外の2つのソフトウェアiSMとEIMは、HPE製エッジコンピュータを一元管理することができるシステム管理ソリューションで、リモートからハードウェア、BIOSレベルの各種コンフィグレーション、アップデートなども行うことができる機能を有しており、エンタープライズクラス(エンプラクラス)のIT機器で行っていたようなシステム管理をエッジのシステムで行うことを可能としたものとなる。

リモート管理は、有線LANのほか、LTE通信やWi-Fiといった無線通信にも対応しているため、EL300にはオプションとしてLTEやWi-Fiのアンテナも用意されている。

なお、同社はOT分野での市場開拓に向け、日本地域においてもパートナー企業の拡大を図っている。今後もその数は増やして行きたいとするほか、「将来はITとOTが集約されていないエッジシステムを購入する企業がいなくなると思っている。そうした未来に向け、ITとOTを統合できる技術があるHPEだからこそ、細かいニーズにまで対応できる、という部分を前面に押し出していくことで、業界をリードしていきたい」と語っており、IT、OT双方を理解し、高い技術力を背景に、それをつなぎ合わせることができる企業として、存在感を高めていきたいとしている。

  • ハイパーコンバージドシステム
  • ハイパーコンバージドシステム
  • ハイパーコンバージドシステム
  • HPEのソリューションはITとOTの管理を1台のシステムで実行することができる。エッジコンピュータのみならず、ソフトウェアも提供しているのは現状、HPEだけであると同社は主張しており、こうした特長を生かすことで、パートナーを増やしていきたいとしている