発火・爆発しない安全な二次電池の実現に向けて、さまざまな研究開発が進められているが、東芝マテリアルは2019年1月30日から2月1日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「nano tech 2019」の、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度ブースにて、半導体を固体電池として活用する研究の紹介を行っている。
半導体が固体電池として活用できる可能性が示されたのはごく最近。もともと、東芝では負極にチタン酸リチウムを採用した独自の二次電池「SCiB」の開発、製造を行ってきたが、その研究開発過程に半導体開発の感覚を持ち込んだところ、今回の研究のもとになる半導体の素性が見えてきたという。
今回、示されているのは、正極となるITO基板の上にp型半導体層を形成し、その上に絶縁層、さらにその上にn型半導体層、そしてその上に負極を配置することで電池化した素子。この構造だけを見ると、半導体を金属に変えるとコンデンサになるので、なんとなく電池として使えそうだという気になるのだが、実は、まだその詳細な原理は分かっておらず、検証の段階にあるという。
そのため、この形が最適なものであるのか、といった根本的な部分から、絶縁層の最適な厚みはどれくらいか、膜質はどの程度のものがよいのか、といったことも良く分かっておらず、ようやく最近、絶縁層は薄くすると充電容量は減るが、厚くしても、一定の厚み以上からは変化しない、といったことや、絶縁層の表面が粗いほうが高い性能を示す、といったことなどがわかってきたという。
また、試作電池を用いた実験(定電流充電、定電流放電を2サイクル)では、500秒ほどで放電しきってしまうことを確認。並行平板コンデンサ構造と比べては8000倍以上のエネルギー蓄積を確認したものの、一般的な二次電池としては放電時間が短すぎるので、例えばLSIの配線層の中にこうした機能を搭載したり、といった使い方などを検討しているとする。もちろん、将来的に原理が解明され、大容量化や放電を抑えられる仕組みなどが、考案されれば、リチウムイオン電池などの代替ということにつながる可能性もあるが、そのためには継続して研究を進めていってもらう必要があるわけで、この現象に興味をもって、研究をしてみようと思う人が増えることを期待したいところである。