宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月17日、赤外線天文衛星「あかり」を用いた観測結果を用いた研究により、はやぶさ2が赴いている小惑星「リュウグウ(Ryugu)」も属する複数のC型小惑星から水の存在を確認したことを明らかにした。これにより、小惑星にも何らかの形で水が存在していることが確実になったという。

今回の成果は、神戸大学大学院理学研究科 惑星科学研究センターの臼井文彦 特命助教、JAXA 宇宙科学研究所の長谷川直 主任研究開発員、同 大坪貴文 宇宙航空プロジェクト研究員、東京大学大学院理学系研究科 天文学専攻の尾中敬 名誉教授らの研究グループによるもの。将来は学術誌「日本天文学会欧文研究報告誌(PASJ:Publications of the Astronomical Society of Japan)」(電子版)に掲載された。

地球上には多量の水が存在しているが、その水がどこから来たのかについてはまだよく分かっていない。その候補の1つとして考えられているのが小惑星で、近年の研究から、小惑星にもなんらかの形で水が保持されている可能性が指摘されており、今回、研究グループは、「あかり」を用いて、C型小惑星の解析を実施。岩石中に水の成分を含む「含水鉱物」のほか、氷やアンモニア化物といった物体が多くのC型小惑星に存在していることを確認したとする。

具体的には、波長2.5~5μmの分光観測を、既知のさまざまな型の小惑星66天体に対して2008年5月~2010年2月にかけて実施。C型小惑星は22天体が観測対象で、そのうち17天体に含水鉱物の存在を示す波長2.7μmのスペクトルを、5天体に氷やアンモニア化物の存在を示す波長3.1μmのスペクトルを検出。さらに詳しく調査した結果、波長2.7μm付近の吸収がもっとも深くなる波長と、吸収の深さに関係性があることが判明したという。

  • C型小惑星の赤外線反射スペクトル

    C型小惑星の赤外線反射スペクトル (C) JAXA)

今回の結果から、C型小惑星は岩石と氷が集まって低温環境で形成されたと考えられており、その後、岩石中の放射性同位体の崩壊熱により氷が溶けて液体の水ができるが、さらにその後、液体の水と岩石が反応することで含水鉱物が生成。その後も長い時間をかけて、太陽からのプラズマや微小隕石の衝突エネルギーのような2次的なエネルギーによる加熱を受けることで、徐々に水を失っていく(加熱脱水)というC型小惑星の形成と進化の過程が明らかになったと研究グループは説明している。

  • C型小惑星における2.7μm付近の吸収がもっとも深くなるピーク波長

    C型小惑星における2.7μm付近の吸収がもっとも深くなるピーク波長と、吸収の深さの関係。水の含有量の違いによって、微妙にピーク波長が変わっていることが確認された (C JAXA)

なお、研究グループによると、なぜ2.7μm付近と3.1μm付近の波長の違いが生じるのかについては、まだよく分かっていないため、今後、さらに多くの小惑星を対象にした観測などを行なうことでその謎の解明を進めたいとしている。ただし、宇宙からの観測については、「あかり」が2011年で運用を終了してしまっていることから、2021年に米国が打ち上げを予定している「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の稼動まで待つ必要があるという。